特定技能外国人を受け入れる際、登録支援機関と契約することで、外国人スタッフに対する生活支援や相談対応、各種手続きのサポートなどを委託することができます。
しかし、登録支援機関と契約したからといって、受入れ企業側の業務がすべてなくなるわけではありません。
特定技能外国人を雇用するのは受入れ企業であるため、給与・勤務時間・業務指導・職場環境など、雇用主として対応するべき業務は企業側に残ります。
また、外国人スタッフが安心して働き続けるためには、登録支援機関だけではなく、企業の現場担当者や管理者との日常的なコミュニケーションも重要です。
この記事では、登録支援機関と契約した後に、企業側で対応する主な業務と、登録支援機関と連携して行う業務について分かりやすく解説します。
1.まず知っておきたい「企業」と「登録支援機関」の役割
登録支援機関は、特定技能外国人に対する支援を企業から委託され、支援計画に基づいて必要な支援を行う機関です。
一方、外国人スタッフを雇用するのは受入れ企業です。
そのため、基本的には次のような役割分担になります。
| 企業側 | 登録支援機関 |
| 雇用契約・給与管理 | 生活オリエンテーション |
| 勤務時間・休暇管理 | 相談・苦情への対応 |
| 業務指導・教育 | 生活・住居に関する支援 |
| 職場環境の整備 | 行政手続き等のサポート |
| 労務管理 | 定期的な面談 |
| 日常的な声かけ | 支援内容の実施・記録 |
| 勤務状況の確認 | 必要な支援について企業と連携 |
ただし、実際の役割分担は、企業と登録支援機関との契約内容や、支援業務の委託範囲によって異なります。
そのため、契約前に「どこまでを登録支援機関に依頼するのか」を明確にしておくことが重要です。
2.雇用契約・労働条件を管理する
登録支援機関と契約しても、外国人スタッフとの雇用関係は企業と外国人本人との間にあります。
そのため、企業側では通常の従業員と同様に、適切な労務管理を行う必要があります。
具体的には、
- 雇用契約の締結・管理
- 労働条件の確認
- 給与・賞与の支払い
- 勤務時間の管理
- 残業時間の管理
- 休日・休暇の管理
- 有給休暇の管理
- 社会保険・労働保険に関する手続き
- 雇用契約を変更する場合の対応
- 退職時の手続き
などがあります。
外国人だから特別に低い条件にしてはいけません
特定技能外国人についても、労働関係法令を守って適切に雇用することが必要です。
特に、給与・労働時間・休日などについては、契約内容と実際の勤務状況に違いがないか、企業側で定期的に確認することが重要です。
3.仕事の指導・教育は企業側の重要な役割
登録支援機関は、外国人スタッフの生活面や相談対応を支援しますが、日々の仕事を教えるのは基本的に受入れ企業です。
例えば、
- 業務内容の説明
- 作業手順の説明
- 職場のルールの説明
- 安全衛生教育
- 使用する機械・設備の説明
- 介護・農業・外食など各分野の業務指導
- 新しい業務を担当するときの教育
- 業務上必要な日本語の説明
などがあります。
特に入社直後は、外国人スタッフが「分からないけれど聞けない」という状態にならないよう、企業側から積極的に声をかけることが大切です。
4.「仕事の日本語」も職場でサポートする
外国人スタッフが日本語を勉強していても、実際の職場では教科書には出てこない言葉が多く使われます。
例えば、
「これを先にお願いします」
「終わったら報告してください」
「分からなかったら聞いてください」
「危ないので気をつけてください」
など、現場特有の表現があります。
そのため、企業側では単に「日本語ができる・できない」で判断するのではなく、仕事に必要な言葉を具体的に説明することが重要です。
必要に応じて、登録支援機関に相談して、やさしい日本語での説明や通訳・翻訳などを活用することもできます。
5.日々の勤務状況を確認する
外国人スタッフに問題が起きた場合、登録支援機関が定期面談を行うまで待つのではなく、企業側で早めに状況を確認することが重要です。
例えば、
- 遅刻が増えている
- 欠勤が続いている
- 仕事のミスが増えている
- 指示を理解できていない
- 同僚とのトラブルがある
- 体調面で問題がありそう
- 仕事に対する不安を感じている
- 退職を考えている様子がある
といった変化です。
小さな変化の段階で企業と登録支援機関が情報を共有することで、大きなトラブルを防ぎやすくなります。
6.職場でのコミュニケーションを大切にする
特定技能外国人の定着には、給与や仕事内容だけでなく、職場の人間関係も大きく関係します。
例えば、企業の担当者が定期的に、
「仕事で困っていることはありませんか?」
「分からないことはありませんか?」
「職場で困っていることはありませんか?」
「生活面で何か問題はありませんか?」
と声をかけるだけでも、外国人スタッフが相談しやすくなります。
登録支援機関による定期面談は重要ですが、日常的なコミュニケーションを企業側でも行うことが大切です。
7.勤務条件などに変更がある場合は早めに共有する
特定技能外国人の雇用条件や勤務状況に変更がある場合は、登録支援機関へ早めに相談・共有しましょう。
例えば、
- 転勤
- 勤務地の変更
- 業務内容の変更
- 給与の変更
- 労働時間の変更
- 雇用契約の変更
- 長期休暇
- 休職
- 退職
- 解雇
- 会社名・所在地などの変更
などです。
変更内容によっては、入管関係の手続きや届出等が必要になる場合があります。
そのため、企業側で変更が発生した場合は、
「まず登録支援機関に連絡・相談する」
という社内ルールを作っておくと安心です。
8.転職・退職を希望した場合も早めに相談する
外国人スタッフから、
「退職したい」
「別の会社で働きたい」
「帰国したい」
などの相談があった場合も、企業だけで判断せず、早めに登録支援機関へ共有することをおすすめします。
退職理由を確認することで、職場環境や待遇など、改善できる問題が見つかる場合もあります。
また、退職や契約終了に伴って必要となる手続きがある場合もあるため、できるだけ早い段階で情報共有することが重要です。
9.住居・生活面についても企業側の協力が必要な場合がある
登録支援機関は、特定技能外国人の生活に関する支援を行います。
例えば、
- 住居確保に関する支援
- 生活オリエンテーション
- 行政手続きのサポート
- 銀行口座開設などの支援
- 携帯電話・通信契約に関する支援
- 生活ルールの説明
- 相談対応
などがあります。
しかし、生活面の問題が勤務に影響する場合には、企業側にも協力していただく必要があります。
例えば、
「通勤方法が分からない」
「公共交通機関の利用方法が分からない」
「職場の近くにどのような施設があるか分からない」
といった場合には、企業側から職場周辺の情報を提供することで、外国人スタッフが早く生活に慣れることができます。
10.災害・緊急時の対応方法を説明する
日本で生活する外国人にとって、地震・台風・大雨・火災などの災害への備えも重要です。
企業側では、職場での緊急時のルールについて説明しておきましょう。
例えば、
- 火災発生時の避難方法
- 避難場所
- 緊急連絡先
- 夜勤中の緊急対応
- 職場で事故が発生した場合の連絡方法
- 災害時の出勤について
などです。
特に介護施設や工場などでは、外国人スタッフが緊急時にも適切に行動できるよう、実際の職場に合わせた説明が必要です。
11.定期面談に必要な情報を登録支援機関へ共有する
登録支援機関では、特定技能外国人に対して定期的な面談を行います。
その際、企業側から勤務状況について情報を提供していただくことで、より適切な支援につなげることができます。
例えば、
- 勤務状況
- 遅刻・欠勤
- 業務上の問題
- 職場での人間関係
- 日本語能力
- 生活上の問題
- 本人からの相談
- 今後の希望
などです。
企業側と登録支援機関が別々に情報を持つのではなく、必要な情報を適切に共有することが重要です。
12.企業側でも「支援記録」を残しておく
外国人スタッフに関する重要な相談やトラブルがあった場合は、企業側でも記録を残しておくと安心です。
例えば、
- 面談日
- 面談者
- 本人からの相談内容
- 企業側の対応
- 登録支援機関への連絡内容
- 問題解決の状況
などです。
「いつ、誰が、何を聞いて、どのように対応したのか」を残しておくことで、後から状況を確認しやすくなります。
登録支援機関側でも必要な支援記録を作成するため、企業側で把握している情報を共有していただくことが重要です。
13.トラブルが発生したら、できるだけ早く相談する
特定技能外国人との間で問題が発生した場合、
「もう少し様子を見よう」
と長期間放置してしまうと、問題が大きくなる可能性があります。
例えば、
- 無断欠勤
- 職場内トラブル
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
- 給与に関する不満
- 仕事上の重大なミス
- 住居トラブル
- 退職希望
- 失踪のおそれ
- 体調不良
などが発生した場合には、早めに登録支援機関へ相談しましょう。
企業と登録支援機関が早期に情報を共有することで、問題が深刻化する前に対応できる場合があります。
14.企業担当者を決めておくとスムーズ
特定技能外国人を受け入れる企業では、外国人スタッフからの相談や登録支援機関との連絡を担当する社内担当者を決めておくことをおすすめします。
例えば、
「外国人材担当者」
「特定技能担当者」
などです。
担当者を明確にしておくことで、
- 登録支援機関からの連絡先が分かる
- 勤務状況を把握しやすい
- 問題発生時にすぐ相談できる
- 必要な情報を社内で共有しやすい
といったメリットがあります。
特に複数名の特定技能外国人を受け入れている企業では、担当者を明確にしておくことが重要です。
15.登録支援機関との連絡体制を決めておく
契約時に、以下のような連絡ルールを決めておくと、受入れ後の対応がスムーズです。
企業側で決めておきたいこと
- 誰が登録支援機関の窓口になるか
- 緊急時の連絡先
- 通常時の連絡方法
- 勤務状況の共有方法
- 変更事項の連絡方法
- 退職・トラブル発生時の連絡方法
- 面談日程の調整方法
「誰に連絡すればよいか分からない」という状態を防ぐことが、外国人スタッフへの迅速な支援につながります。
16.登録支援機関に「丸投げ」しないことが大切
登録支援機関との契約によって企業の負担を軽減することはできます。
しかし、
「登録支援機関と契約したので、外国人スタッフのことはすべて任せればよい」
という考え方は適切ではありません。
登録支援機関は、企業と外国人スタッフの間に立って支援を行う重要なパートナーです。
企業側には、雇用主として、
- 適切な労働条件を提供する
- 安全な職場環境を整える
- 仕事を教える
- 勤務状況を管理する
- 日常的にコミュニケーションを取る
- 問題があれば早めに相談する
といった役割があります。
企業と登録支援機関がそれぞれの役割を果たすことが、外国人材の定着につながります。
17.企業と登録支援機関の役割分担【一覧】
| 項目 | 企業側 | 登録支援機関 |
| 雇用契約 | ◎ | サポート・確認 |
| 給与支払い | ◎ | 必要に応じて相談対応 |
| 勤怠管理 | ◎ | 情報共有を受ける |
| 業務指導 | ◎ | 必要に応じてサポート |
| 職場ルール | ◎ | 必要に応じて説明を補助 |
| 生活オリエンテーション | 協力 | ◎ |
| 住居・生活相談 | 協力 | ◎ |
| 行政手続き | 必要な協力 | サポート |
| 定期面談 | 情報提供・協力 | ◎ |
| 相談・苦情対応 | 協力 | ◎ |
| 職場環境の改善 | ◎ | 必要に応じて相談 |
| 雇用条件変更の情報共有 | ◎ | 確認・必要な支援 |
| 退職・トラブル対応 | ◎・早期共有 | ◎・相談対応 |
| 支援記録 | 必要な情報を共有 | 支援内容を記録 |
※「◎」は主な担当を示したものであり、実際の業務範囲は契約内容や個別の状況によって異なります。
18.受入れ企業が準備しておきたいチェックリスト
登録支援機関との契約後、企業側では次の項目を確認しておくと安心です。
雇用・労務
□ 雇用契約の内容を確認している
□ 給与・勤務時間を適切に管理している
□ 休暇・有給休暇を管理している
□ 社会保険・労働保険等の手続きを行っている
職場
□ 業務内容を分かりやすく説明している
□ 職場ルールを説明している
□ 安全衛生について教育している
□ 日本語で分かりにくい業務を丁寧に説明している
□ 相談できる担当者を決めている
支援・連携
□ 登録支援機関の担当者を把握している
□ 緊急時の連絡先を確認している
□ 定期面談に協力している
□ 勤務状況を登録支援機関と共有している
□ 雇用条件などの変更を早めに連絡している
□ トラブル発生時の相談方法を確認している
19.登録支援機関を上手に活用するポイント
登録支援機関は、単に「書類や生活支援を代行する会社」ではありません。
企業にとっては、外国人材の受入れから定着までを一緒に考えるパートナーとして活用することができます。
例えば、
「外国人スタッフが職場に馴染めていない」
「日本語でのコミュニケーションに問題がある」
「生活面で困っているようだ」
「退職を考えているようだ」
といった問題があれば、早い段階で登録支援機関に相談することが重要です。
問題が大きくなってから対応するのではなく、小さな変化の段階で相談することが、外国人材の定着やトラブル防止につながります。
まとめ|登録支援機関と企業が協力することが大切
登録支援機関と契約することで、特定技能外国人の生活支援や相談対応などについて、企業の負担を軽減することができます。
しかし、登録支援機関と契約した後も、企業には雇用主として対応すべき重要な業務があります。
特に重要なのは、
- 雇用契約・給与・勤務時間などの労務管理
- 日々の業務指導・教育
- 安全で働きやすい職場環境の整備
- 外国人スタッフとの日常的なコミュニケーション
- 勤務状況や問題の把握
- 雇用条件などの変更に関する情報共有
- 登録支援機関との定期的な連携
- 問題が発生した場合の早期相談
です。
つまり、
企業が「雇用・仕事・職場」を担当し、登録支援機関が「生活・相談・支援」をサポートする。
そして、必要な情報をお互いに共有しながら、外国人スタッフを支えていくことが重要です。
特定技能外国人に長く安心して働いてもらうためには、企業と登録支援機関がそれぞれの役割を理解し、継続的に連携することが大切です。
特定技能外国人の受入れを検討している企業様へ
「登録支援機関にどこまで依頼できるのか分からない」
「自社で対応する業務が分からない」
「外国人材の受入れ後の支援体制を整えたい」
「現在の支援体制を見直したい」
このようなお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。
受入れ前の準備から、入国後の生活支援、職場での定着まで、企業様の状況に合わせて支援体制を整えることが重要です。
外国人材の受入れを「採用して終わり」にせず、「安心して働き続けられる環境づくり」までサポートすることが、長期的な人材定着につながります。

