「特定技能外国人を採用したいけれど、企業として何に注意すればいいの?」
「採用後にトラブルにならないためには、何をしてはいけない?」
特定技能制度では、外国人を採用するだけでなく、適切な雇用条件や支援体制を整え、受入れ後も必要な届出を行うことが企業に求められています。
特に、給与・労働条件・保証金や違約金・支援・業務内容・届出などについて、制度上のルールに反する対応をすると、受入れ企業としての適格性に影響する可能性があります。
今回は、2026年8月時点の制度・運用を踏まえて、特定技能外国人の受け入れで企業がやってはいけないこと7つを、企業担当者向けに分かりやすく解説します。
※特定技能制度は改正されることがあります。実際の受入れ・申請・届出を行う際は、最新の出入国在留管理庁の情報や分野別運用要領を確認してください。
1.日本人より低い給与を設定する
特定技能外国人だからという理由で、日本人より低い給与を設定することはできません。
特定技能雇用契約では、外国人の報酬額が、同等の業務に従事する日本人が受ける報酬額と同等以上であることが求められています。出入国在留管理庁も、報酬額や労働時間等について日本人と同等以上であることを受入れの重要な基準として示しています。
【やってはいけない例】
- 「外国人だから」という理由で基本給を低く設定する
- 日本人には支給している手当を、外国人であることだけを理由に対象外にする
- 外国人だからという理由だけで賞与・昇給の対象から外す
- 福利厚生施設の利用などについて不合理な差を設ける
出入国在留管理庁も、外国人であることを理由とした待遇面での差別的な取扱いをしないことを受入れ企業に求めています。
【企業が行うべき対策】
- 同等の業務・責任を担う日本人社員の賃金水準を確認する
- 基本給だけでなく、手当・賞与・福利厚生なども確認する
- 雇用条件を本人が十分理解できる言語で説明する
- 雇用契約書・雇用条件書と実際の給与条件を一致させる
「外国人だから安く雇える」という考え方ではなく、仕事内容・経験・責任などを踏まえて適正な待遇を設定することが重要です。

2.雇用契約に違約金・保証金を設定する
「途中で退職したら100万円を支払う」
「3年以内に辞めたら違約金を払う」
このような契約を特定技能外国人と締結することはできません。
出入国在留管理庁は、受入れ機関について、保証金の徴収や違約金契約を締結していないことを受入れの基準の一つとして示しています。
【注意したいケース】
- 「途中退職したら違約金100万円」と契約する
- 「失踪したら保証金を没収する」と約束させる
- 会社が立て替えた費用について、実質的に違約金となるような高額な返還義務を設定する
- 本人や家族から保証金・担保などを徴収する
また、1号特定技能外国人に対する義務的支援の費用を本人に負担させることも認められていません。支援に必要な費用は、原則として受入れ機関側が負担します。
ただし、ここは注意が必要です。
「外国人に一切の費用を請求できない」という意味ではありません。
実際の費用負担については、費用の性質や契約内容によって扱いが異なるため、「採用費用や渡航費はすべて企業負担」と一律に書くのではなく、個別の費用ごとに制度・法令を確認する必要があります。


3.特定技能で認められていない業務をさせる
特定技能外国人は、在留資格・特定産業分野・業務区分に応じて認められた業務に従事する必要があります。
そのため、
「人手が足りないから別部署で働いてもらう」
「本来の仕事が暇だから、別の仕事をメインでやってもらう」
といった運用には注意が必要です。
特定技能では、分野別の運用要領で定められた業務が基本となります。現在の制度では特定技能の対象分野・業務区分が細かく定められているため、「特定技能だから何でもできる」というわけではありません。
【企業が注意するポイント】
- 自社の分野別運用要領を確認する
- 在留資格申請時の業務内容と実際の業務を一致させる
- 業務区分を変更する場合は必要な届出・手続きを確認する
- 関連業務を行わせる場合も、主たる業務との関係を確認する
特に、「関連業務」と「本来の業務」を混同しないことが重要です。
部署異動や仕事内容の変更を行う場合は、現場だけで判断せず、事前に制度上問題がないか確認しましょう。

4.1号特定技能外国人への支援を放置する
1号特定技能外国人を受け入れる場合、受入れ機関には1号特定技能外国人支援計画を作成し、計画に基づいて必要な支援を行う義務があります。
義務的支援は大きく10項目に分けられます。
【義務的支援10項目】
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
- その他、必要な支援に関する事項
出入国在留管理庁も、1号特定技能外国人に対する義務的支援を10項目として整理しています。
【特に注意したいポイント】
原稿では「月1回以上の面談」となっていますが、これは修正が必要です。
現在は、外国人本人およびその監督する立場にある者との定期的な面談を3か月に1回以上行うことが基本です。
また、2024年1月1日以降、この定期面談は原則として対面で実施する必要があります。
【登録支援機関への委託も可能】
支援は受入れ企業が自ら行うこともできますが、登録支援機関に支援計画の全部または一部を委託することも可能です。
登録支援機関に全部を委託した場合、受入れ企業は一定の支援体制に関する基準を満たしたものとみなされます。


5.外国人だからという理由で差別する
「外国人だから日本人より待遇を悪くする」
「外国人には研修を受けさせない」
「外国人だから社員食堂や福利厚生施設を利用させない」
このような差別的な取扱いは避けなければなりません。
出入国在留管理庁も、外国人であることを理由として、福利厚生施設の利用など待遇面で差別的な取扱いをしないことを受入れ企業に求めています。
【企業が取り組むべきこと】
- 必要な社内研修を公平に受けられるようにする
- 福利厚生制度を合理的な基準で運用する
- ハラスメント防止について日本人社員にも周知する
- 外国人社員が相談しやすい環境を整える
- 言語や文化の違いによる誤解を放置しない
日本人と外国人で必要な「サポート方法」は異なる場合があります。
しかし、国籍を理由に不合理な待遇差を設けることとは別問題です。

6.退職・転職を不当に妨害する
特定技能外国人が退職・転職を希望した場合、企業が違約金などを使って本人を不当に拘束することは避けなければなりません。
【やってはいけない例】
- パスポートや在留カードを取り上げる
- 通帳などを会社で保管する
- 「辞めたら違約金を払え」と脅す
- 給料を意図的に支払わない
- 「辞めたら在留資格を取り消して帰国させる」などと脅す
- 必要な退職関係書類の交付を不当に遅らせる
特定技能外国人の転職については、一定の条件のもとで転職が可能です。ただし、どの会社・どの仕事にも自由に移れるという意味ではありません。
転職先でも特定技能として働くためには、転職先が適切な受入れ機関であり、本人の業務が特定技能の対象となることなど、必要な在留資格上の要件を満たす必要があります。分野を変更する場合などには、在留資格変更許可申請が必要になる場合があります。
【企業が取るべき対応】
- 退職理由を丁寧に確認する
- 改善可能な問題があれば対応する
- 本人の退職意思を尊重する
- 必要な届出を期限内に行う
- 転職する場合は、必要な手続きを適切に案内する
「辞めさせない」ことよりも、法令を守りながら適切に退職・転職手続きを進めることが重要です。

7.必要な届出や手続きを後回しにする
特定技能外国人を受け入れた後も、企業にはさまざまな届出義務があります。
ここは2026年版の記事では必ず修正してください。
【2026年4月1日から定期届出が変更】
以前は四半期ごとの定期届出が基本でしたが、2025年4月1日の制度改正により、特定技能所属機関の定期届出は原則として年1回に変更されました。
さらに、出入国在留管理庁は2026年4月1日以降の新しい定期届出様式を案内しています。
現在の定期届出は、原則として、
対象期間:4月1日~翌年3月31日
提出期間:翌年4月1日~5月31日
となっています。
したがって、元原稿にある
「四半期ごと(毎年4月・7月・10月・1月)の翌月15日まで」
という記載は、2026年版では削除・変更が必要です。
【随時届出にも注意】
定期届出とは別に、雇用契約の変更・終了、新たな契約の締結など、一定の事由が発生した場合には随時届出が必要です。
例えば、特定技能雇用契約を変更・終了・新たに締結した場合は、事由が生じた日から14日以内に届出を行う必要があります。
また、受入れ継続が困難となった場合にも届出が必要で、退職など一定のケースでは14日以内の届出が求められます。
【企業が行うべき対策】
- 定期届出の対象期間と提出期間を管理する
- 雇用契約の変更・終了などが発生したら速やかに確認する
- 支援計画の変更があれば必要な届出を確認する
- 退職・解雇・受入れ困難などが発生した場合は14日以内の届出を確認する
- 支援記録・給与記録・雇用関係書類を適切に保存する
「採用手続きが終わったから完了」ではありません。
特定技能は、受入れ後の雇用管理・支援・届出まで継続して適切に行う必要があります。

まとめ|特定技能外国人は「採用して終わり」ではない
特定技能外国人を受け入れる企業にとって重要なのは、採用そのものだけではありません。
適正な給与・労働条件を設定し、認められた業務に従事してもらい、1号特定技能外国人には必要な支援を行い、さらに必要な届出を適切に行うことが重要です。
今回紹介した「やってはいけないこと7選」をもう一度確認しましょう。
- 日本人より低い給与を設定する
- 雇用契約に違約金・保証金を設定する
- 認められていない業務をさせる
- 1号特定技能外国人への支援を放置する
- 外国人だからという理由で差別する
- 退職・転職を不当に妨害する
- 必要な届出や手続きを後回しにする
特定技能制度は、2026年にも制度・運用の見直しが続いています。実際に出入国在留管理庁は、2026年8月20日にも特定技能外国人の受入れに関する運用要領や申請・届出様式を更新しています。
そのため、企業は古い情報だけで判断せず、最新の運用要領・分野別運用要領・申請・届出様式を確認することが大切です。
「採用して終わり」ではなく、
「安心して働き続けられる環境をつくる」
ことが、トラブル防止だけでなく、外国人材の定着・活躍にもつながります。


