特定技能外国人の受け入れ後に起きる「指示が伝わらない」問題|現場で見落としやすい5つの盲点

外国人受け入れ後の指示の盲点

特定技能外国人を受け入れる際、在留資格の手続きや住居の準備、生活支援などには十分な準備をしていても、実際に働き始めてからの「仕事の教え方」までは準備できていない会社も少なくありません。

外国人材も、仕事に慣れていけば少しずつ日本語や職場のルールを理解していきます。

しかし、入社したばかりの段階では、

「説明したのに伝わっていなかった」
「本人はできていると思っていた」
「会社はまだ一人前ではないと思っている」

といった認識のずれが起こることがあります。

大切なのは、外国人本人の日本語力だけを問題にするのではなく、受け入れる会社側も「どうすれば伝わるか」を考えておくことです。

今回は、特定技能外国人を受け入れた後、現場で意外と見落としやすいポイントを紹介します。

1.方言は意外と伝わらない

地方の会社、特に農業や介護、製造業など地域の人同士で働く職場では注意したいポイントです。

日本で生活して1年、2年と経てば、外国人も少しずつ地域の言葉を理解するようになります。

しかし、来日前に外国人が勉強している日本語は、基本的には教科書などで使われる標準的な日本語です。

たとえば、

「これ、なおしといて」
「そこ、えらいで休んどき」
「これ、ほかっといて」

といった地域特有の表現は、日本人同士では普通に通じても、外国人にはまったく別の意味に聞こえることがあります。

入社直後は特に、

「これを片付けてください」
「疲れたら休んでください」
「これは捨ててください」

など、できるだけ標準的で意味のはっきりした言葉を使う方が安全です。

2.長い文章を一度に話さない

日本人同士では、ついこのような説明をしてしまいます。

「今日は雨が降りそうだから、こっちを先にやって、それが終わったら昨日残っていた作業があるので、そっちもお願いね」

日本語を勉強している人にとっては、一文が長くなるほど「どこが一番重要な指示なのか」が分かりにくくなります。

同じ内容でも、

「今日は、これを先にしてください」
「終わったら教えてください」
「そのあと、昨日の仕事をします」

と区切った方が伝わりやすくなります。

一度にたくさん説明するよりも、「一つ伝える→確認する→次を伝える」と考えると分かりやすくなります。

3.丁寧な日本語より「分かる日本語」

丁寧な日本語より分かる日本語

外国人に対して失礼にならないように、丁寧に話そうとする会社も多いと思います。

もちろん、その気遣い自体は大切です。

しかし、

「こちらの作業をお願いしてもよろしいでしょうか」
「終わりましたら、こちらに置いていただければと思います」

という表現は、日本語学習者にとってかえって難しくなることがあります。

仕事の指示では、

「これをしてください」
「終わったら、ここに置いてください」
「次はこれをします」

くらいの短い日本語でも十分です。

少しぶっきらぼうに感じるかもしれませんが、「伝わらない丁寧さ」より「確実に伝わるシンプルな言葉」の方が、仕事では重要です。

もちろん、命令するような強い話し方をする必要はありません。

短く、具体的に、同じ言葉を使うことがポイントです。

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4.数字を含む指示は「口頭だけ」にしない

特に注意したいのが、数字を含む作業です。

たとえば、

「10分間動かしてください」
「30センチ間隔で置いてください」
「この範囲を20㎡ずつ作業してください」
「3個ずつ入れてください」

といった指示です。

数字を聞き間違えるだけで、作業結果が大きく変わることがあります。

このような内容は、口頭で説明するだけではなく、

「10分」
「30cm」
「3個」

など、紙やホワイトボード、チャットなどに書いて見せることをおすすめします。

さらに、毎日・毎週繰り返す仕事であれば、毎回口頭で説明するよりも、写真付きの作業手順書を作った方が効率的です。

スマートフォンで実際の作業を撮影して、短い動画マニュアルを作る方法もあります。

一度マニュアルを作れば、新しく外国人を採用したときにも使うことができます。

5.「注意されない=できている」と思われることがある

ここは、日本人の職場で特に注意したいポイントです。

同じことを何度も注意することに対して、

「何度も言うのはかわいそう」
「そこまで強く言わなくてもいいのでは」

と考えることもあるでしょう。

その結果、多少できていなくても何も言わなくなってしまうことがあります。

しかし、会社が何も言わなければ、本人からすると、

「このやり方で問題ない」
「自分はもう一人で仕事ができている」

と判断してしまう可能性があります。

そして数か月後、

会社:「まだこの仕事は一人では任せられない」
本人:「私はずっとこの仕事をしている。なぜ評価されないのか」

という認識のずれにつながります。

注意すること自体が問題なのではありません。

大切なのは、「何ができていて、何がまだできていないのか」を本人に分かる形で伝えることです。

「できる仕事リスト」を作ると分かりやすい

外国人材の5段階評価表

可能であれば、外国人を受け入れる前に「一人でできるようになってほしい仕事」の一覧を作っておくことをおすすめします。

さらに、それぞれの仕事について到達度を分けておくと分かりやすくなります。

たとえば、

レベル1:まだ説明が必要
レベル2:教えてもらいながらできる
レベル3:確認してもらえばできる
レベル4:一人でできる
レベル5:他の人にも教えられる

というような5段階です。

最初から完璧にできることを求める必要はありません。

「今はレベル2」
「次は一人でここまでできるようになろう」
「ここまでできれば一人前」

という道筋が見えることが大切です。

これは外国人のためだけではありません。

教える日本人スタッフにとっても、「何をどこまで教えればいいのか」が明確になります。

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「会社が求める一人前」を先に共有する

会社が求める1人前を先に共有する

外国人材の定着を考えるうえで重要なのは、会社が求める基準を曖昧にしないことです。

本人が、

「自分は十分仕事ができている」

と思っている一方で、会社が、

「まだ一人では任せられない」

と思っている状態を長く続けてはいけません。

そのままでは、

「仕事はできているのに評価してもらえない」
「会社が昇給してくれない」
「何も教えてくれない」

といった不満につながることがあります。

反対に、

「ここまでできれば十分」
「ここまでできれば一人前」
「次に覚えてほしい仕事はこれ」

という基準が共有されていれば、本人も自分の現在地を理解できます。

登録支援機関も、面談や通訳などを通じて会社と外国人の意思疎通をサポートすることはできます。

しかし、その前に大切なのは、受け入れ企業自身が、

「この仕事を一人でここまでできたら十分」
「ここまでできれば高く評価する」

という基準を整理することです。

その基準を、外国人本人、現場の指導担当者、登録支援機関で共有しておくと、入社後のすれ違いを大きく減らすことができます。

まとめ|「言った」ではなく「伝わった」を基準にする

外国人材を受け入れた後の教育では、日本人とまったく違う特別な教育制度を作らなければならないわけではありません。

重要なのは、

・方言を避け、分かりやすい日本語を使う
・一文を短くする
・丁寧さより分かりやすさを優先する
・数字や重要事項は文字でも伝える
・繰り返す仕事はマニュアル化する
・できていないことは具体的に伝える
・「一人前」の基準を見えるようにする

といった小さな工夫です。

外国人側にも、働きながら日本語や仕事を覚えていく努力は必要です。

一方で会社側も、「説明したから分かっているはず」ではなく、「本当に伝わったか」を確認する仕組みを作ることが重要です。

採用して終わりではなく、一人で仕事ができるようになるまでの道筋を見せる。

それが、外国人材の育成と長期的な定着につながります。

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