特定技能外国人を雇用している企業では、事業状況や人員配置の変更などにより、賃金、労働時間、休日、勤務場所、担当業務などの労働条件を変更する場合があります。
しかし、特定技能外国人の労働条件を変更する際には、一般的な労務管理だけでなく、労働関係法令、特定技能雇用契約、出入国在留管理庁への届出、外国人本人への説明など、複数の事項を確認する必要があります。
例えば、基本給を引き下げる場合には、労働契約法などに照らした慎重な判断が必要です。また、勤務場所や担当業務を変更するときは、変更後の勤務先や業務内容が特定技能制度の要件を満たしているか確認しなければなりません。
さらに、特定技能雇用契約に変更が生じた場合は、変更内容に応じて出入国在留管理庁への届出が必要です。原則として変更事由が発生した日から14日以内に届出を行いますが、一定の変更については届出が不要となる場合もあります。
そのため、変更する項目ごとに、必要な手続きや届出の要否を正確に判断することが重要です。
この記事では、特定技能外国人の労働条件を変更する際に企業が確認すべきポイント、必要な手続き、具体的な事例、登録支援機関との連携方法について解説します。
1.特定技能外国人の労働条件は自由に変更できる?
特定技能外国人の労働条件は、企業が一方的に自由に変更できるものではありません。
労働契約法第8条では、労働者と使用者が合意することによって、労働契約の内容である労働条件を変更できると定められています。
また、労働条件を労働者にとって不利益な内容に変更する場合には、同法第9条・第10条などに基づく確認が必要です。就業規則を変更すれば、どのような条件でも一方的に変更できるわけではありません。
特定技能外国人については、これらの労働関係法令に加え、特定技能雇用契約や在留資格に関するルールも確認する必要があります。
労働条件の変更に該当する主な項目
企業が確認すべき変更事項には、次のようなものがあります。
| 変更項目 | 具体例 | 主な確認事項 |
| 基本給 | 月給22万円から24万円に変更 | 最低賃金、報酬基準、契約内容 |
| 各種手当 | 夜勤手当や資格手当の新設・廃止 | 支給条件、本人への影響 |
| 労働時間 | 1日8時間から7時間30分に変更 | 契約内容、賃金、休憩時間 |
| 勤務シフト | 日勤中心から夜勤中心に変更 | 深夜割増賃金、健康管理 |
| 休日 | 固定休からシフト制に変更 | 法定休日、年間休日数 |
| 勤務場所 | A事業所からB事業所に変更 | 契約上の就業場所、届出の要否 |
| 担当業務 | 担当する介護業務の変更 | 特定技能の対象業務、契約内容 |
| 雇用契約期間 | 契約期間や更新条件の変更 | 契約条件、届出の要否 |
ただし、変更内容によっては、契約書の更新や入管への届出が不要となる場合もあります。
重要なのは、変更する項目だけでなく、変更内容が雇用契約、労働関係法令、特定技能制度にどのような影響を与えるかを確認することです。
2.労働条件を変更する前に確認すべき6つのポイント
① 給与・賃金を変更する場合
給与を変更する際には、基本給だけでなく、各種手当、賞与、固定残業代などの取扱いも確認する必要があります。
特定技能外国人の報酬は、原則として、同等の業務に従事する日本人と同等以上であることが求められます。
また、最低賃金法などの労働関係法令も遵守しなければなりません。
基本給を引き上げる場合
例えば、月給22万円の特定技能外国人について、勤務実績や能力向上などを考慮して月給24万円に引き上げる場合です。
この場合は、次の点を確認しましょう。
- 変更後の基本給と支給開始日
- 雇用契約書や雇用条件書との整合性
- 給与明細や給与計算システムへの反映
- 変更内容を確認できる書類の作成・保管
- 入管への届出の要否
基本賃金の増額など、特定技能外国人にとって利益となる一定の変更については、特定技能雇用契約の変更届出が不要となる場合があります。
ただし、すべての賃金変更について届出が不要になるわけではありません。変更内容に応じて、出入国在留管理庁の最新の案内を確認してください。
基本給を引き下げる場合
例えば、月給24万円から22万円に引き下げる場合は、特に慎重な対応が必要です。
会社の業績が悪化したことだけを理由に、企業が一方的に給与を引き下げられるとは限りません。
確認すべきポイントは次のとおりです。
- 賃金を引き下げる必要性があるか
- 雇用契約や就業規則との整合性が取れているか
- 労働契約法などに照らして問題がないか
- 本人が変更内容と理由を十分に理解しているか
- 変更後も最低賃金などの法令を遵守できるか
- 日本人との報酬比較や特定技能制度上の基準を満たしているか
- 入管への届出が必要か
本人の同意を得れば、どのような賃金引下げでも有効になるわけではありません。
不利益の程度や変更の必要性などを考慮し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談することが重要です。
手当や賞与を変更する場合
基本給以外にも、次のような変更があります。
- 夜勤手当を新設する
- 資格手当を増額する
- 住宅手当の支給条件を変更する
- これまで支給していた手当を廃止する
- 賞与の支給条件を変更する
手当の新設など、本人にとって利益となる一定の変更は、入管への変更届出が不要となる場合があります。
一方、手当の廃止など、本人にとって不利益となる変更については、届出の要否だけでなく、労働契約上の適法性も確認しなければなりません。
② 労働時間・勤務シフトを変更する場合
人員配置や業務量の変化により、勤務時間やシフトを変更する場合があります。
労働時間の変更は、給与や生活設計にも影響するため、事前に変更内容を説明し、必要な手続きを行うことが大切です。
所定労働時間を短縮する場合
例えば、1日8時間勤務から1日7時間勤務に変更するケースです。
月給制か時給制かによって、給与への影響は異なります。
時給制の場合、勤務時間の短縮によって月々の給与が減少する可能性があります。月給制の場合も、契約上の賃金を変更するのか、勤務時間だけを変更するのかによって対応が異なります。
次の点を確認しましょう。
- 変更後の所定労働時間
- 変更後の給与や手当
- 雇用契約書に記載された労働時間
- 休憩時間や休日の確保
- 本人への説明と必要な合意
- 入管への届出の要否
なお、会社の都合で労働時間を短縮する場合は、契約上の労働時間や賃金への影響に加え、休業手当などの労働法上の問題が生じないか確認する必要があります。
日勤から夜勤中心に変更する場合
例えば、介護施設で日勤中心だったスタッフを夜勤中心の勤務に変更するケースです。
この場合は、勤務時間だけでなく、次の事項も確認する必要があります。
- 深夜労働に対する割増賃金
- 時間外労働が発生した場合の割増賃金
- 休憩時間や休日
- 夜勤手当の支給条件
- 健康管理や勤務負担
- 通勤手段や生活リズムへの影響
また、時間外労働を行わせる場合には、法令上必要となる労使協定などの確認も必要です。
勤務シフトの変更が小さく見えても、賃金や労働時間などの契約事項に変更が生じていないかを確認しましょう。
③ 休日・休暇を変更する場合
休日や休暇の変更では、会社の勤務体制だけでなく、法令で定められた休日や年次有給休暇のルールを確認する必要があります。
例えば、固定休からシフト制に変更する場合は、勤務日と休日の決め方、年間休日数、給与への影響などを整理することが重要です。
確認すべきポイント
- 法定休日が確保されているか
- 労働時間や休日に関する法令を遵守しているか
- 年次有給休暇の付与・取得に関するルールが守られているか
- 変更後の休日が雇用契約と整合しているか
- 年間休日数や給与に影響があるか
- 必要な書類の更新や届出を行っているか
労働基準法では、原則として毎週少なくとも1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることが求められています。
また、法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間です。ただし、変形労働時間制など、法令上認められた制度もあります。
休日制度を変更する場合は、会社の就業規則や労使協定なども含めて確認しましょう。
外国人スタッフに説明する際は、やさしい日本語や本人が理解できる言語を使用すると、休日や有給休暇に関する誤解を防ぎやすくなります。
④ 勤務場所を変更する場合
転勤や事業所間の異動などにより勤務場所を変更する場合は、雇用契約書に記載された就業場所や変更の範囲を確認する必要があります。
特定技能外国人については、勤務場所の変更が特定技能雇用契約の変更に該当するかどうかも確認しなければなりません。
同じ会社の別事業所へ異動する場合
例えば、同じ法人が運営する介護施設Aから介護施設Bへ異動するケースです。
この場合、次の点を確認しましょう。
- 雇用契約上、勤務場所の変更が可能か
- 変更後の事業所で特定技能外国人を適切に受け入れられるか
- 変更後の業務が対象分野の要件を満たしているか
- 雇用条件書などの変更が必要か
- 入管への届出が必要か
- 通勤方法や住居への影響があるか
同じ法人内の異動であっても、勤務場所が変更された場合は、特定技能雇用契約に関する届出の要否を確認することが重要です。
雇用主そのものが変わる場合
別法人への転籍などにより雇用主が変わる場合は、同じ会社内の異動とは異なります。
特定技能外国人の受入れ機関が変わる場合は、新たな雇用契約の締結や、在留資格に関する手続きが必要になることがあります。
単に新しい会社で働き始めればよいというわけではありません。
雇用主が変わる場合は、就労開始前に、必要な在留資格上の手続きを確認してください。
⑤ 担当業務・職務内容を変更する場合
特定技能外国人の担当業務を変更する場合は、変更後の業務が、本人の在留資格で認められる活動の範囲内であるかを確認することが重要です。
例えば、介護分野で雇用している外国人スタッフについて、介護業務から大きく異なる業務へ変更する場合は、特に慎重な確認が必要です。
確認すべきポイント
- 変更後の業務が該当する特定産業分野の対象業務に含まれるか
- 主な業務と付随的な業務を区別できているか
- 雇用契約書や雇用条件書の記載内容と一致しているか
- 変更内容に応じた入管手続きが必要か
- 必要な技能や資格、教育・研修が確保されているか
例えば、介護分野の特定技能外国人について、介護業務に関連する付随的な業務を担当させる場合と、介護業務とは関係のない業務を主な仕事として担当させる場合では、判断が異なります。
また、農業や飲食料品製造業など、分野ごとに対象業務や従事できる業務の範囲が定められています。
担当業務を変更する前に、該当分野の運用要領や最新の制度上の要件を確認しましょう。
⑥ 雇用契約期間や更新条件を変更する場合
雇用契約期間や契約更新に関する条件を変更する場合も、注意が必要です。
特定技能外国人の在留期間と雇用契約期間は同じものではありません。在留期間が残っていても、雇用契約の変更に関する手続きが不要とは限りません。
確認すべき事項は次のとおりです。
- 変更後の雇用契約期間
- 契約更新の有無や更新判断の基準
- 雇用契約書や雇用条件書の記載内容
- 本人への説明と必要な合意
- 入管への届出の要否
- 在留期間や在留資格に関する手続きへの影響
契約期間を短縮する場合や、契約更新の判断基準を変更する場合などは、変更内容に応じて届出が必要になることがあります。
契約更新の条件によって取扱いが異なるため、最新の届出案内を確認してください。
3.特定技能雇用契約を変更した場合、入管への届出は必要?
特定技能外国人の労働条件を変更する場合、企業が特に注意すべきなのが、出入国在留管理庁への届出です。
一般的な労務管理上の手続きと、特定技能制度上の届出は別々に確認する必要があります。
例えば、雇用契約書を更新して本人から署名を得た場合でも、入管への届出が必要な変更であれば、別途手続きを行わなければなりません。
変更届出の基本ルール
特定技能雇用契約を変更した場合、原則として、変更事由が発生した日から14日以内に、特定技能所属機関が届出を行います。
ただし、変更内容によって届出が不要となる場合があります。届出の対象や期限、必要書類については、出入国在留管理庁の最新の案内を確認してください。
届出の要否を確認する主な変更事項
特定技能雇用契約の変更に関しては、次のような事項について確認が必要です。
| 変更事項 | 具体例 | 実務上の確認 |
| 雇用契約期間 | 契約期間の変更 | 契約期間や更新条件 |
| 就業場所 | 勤務する事業所の変更 | 変更後の勤務先と届出の要否 |
| 従事すべき業務 | 担当業務の変更 | 特定技能の対象業務に該当するか |
| 労働時間等 | 所定労働時間の変更 | 変更後の労働時間や給与 |
| 休日・休暇 | 休日制度や契約上の休暇条件の変更 | 法令・契約との整合性 |
| 賃金 | 基本給や手当の変更 | 増額・減額などの内容 |
| その他の契約事項 | 契約上の各種条件の変更 | 該当する届出事項と必要書類 |
なお、上記のすべての変更について、一律に同じ手続きが必要になるわけではありません。変更の内容や条件によって、届出の要否や必要書類が異なります。
賃金の増額は届出不要になる場合がある
出入国在留管理庁は、特定技能外国人にとって利益となる一定の賃金変更について、変更届出を不要とする取扱いを示しています。
例えば、一定の条件を満たす基本賃金の増額などが該当する場合があります。
一方、基本賃金の引下げや諸手当の廃止など、不利益となる変更については、届出の要否を慎重に確認する必要があります。
賃金の増額と減額では届出の取扱いが異なるため、変更内容を具体的に確認することが大切です。
また、届出が不要な場合でも、変更後の雇用条件書などを適切に作成・管理する必要があります。届出が不要であることと、書類の更新が不要であることは同じではありません。
届出が不要となる場合も確認する
雇用契約に関連する変更であっても、変更内容や制度上の取扱いによって、届出が不要となる場合があります。
ただし、企業が独自に「軽微な変更」と判断してしまうと、必要な届出を見落とすおそれがあります。
変更を行う際は、出入国在留管理庁が公表している最新の運用要領、届出の記載例、Q&Aなどを確認しましょう。
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4.労働条件を変更するときに必要な書類
労働条件を変更する場合は、変更内容に応じて必要な書類を作成・更新し、会社と本人が同じ条件を確認できるようにすることが重要です。
特定技能外国人の場合は、一般的な労務管理上の書類に加えて、特定技能制度に関する書類も確認しましょう。
① 特定技能雇用契約書
特定技能外国人と受入れ企業との雇用契約を確認するための書類です。
契約内容に変更が生じた場合は、変更内容に応じて契約書の更新や再締結などを検討します。
② 雇用条件書
雇用条件書には、雇用期間、就業場所、従事すべき業務、労働時間、休日、賃金などの条件が記載されます。
特定技能雇用契約の変更届出では、変更後の契約内容を確認する資料として、雇用条件書などの提出が求められる場合があります。
変更後の条件を正確に反映させることが重要です。
③ 労働条件通知書
労働条件通知書は、労働基準法などに基づき、労働条件を明示するための書類です。
労働条件に変更が生じた場合は、変更内容に応じて、書面などによる明示が必要か確認します。
特に、賃金、労働時間、就業場所、従事すべき業務などの変更については、雇用契約書や雇用条件書との整合性も確認しましょう。
④ 就業規則
会社全体の勤務時間、休日、賃金、服務規律などを変更する場合は、就業規則との整合性を確認する必要があります。
また、就業規則の変更によって労働者に不利益が生じる場合には、労働契約法上の要件を満たしているか確認しなければなりません。
必要な手続きについては、労働基準法なども確認しましょう。
⑤ 本人への説明記録
外国人スタッフに労働条件の変更を説明した場合は、説明日、説明内容、使用した言語、本人の理解状況などを記録しておくとよいでしょう。
これは、後日、会社と本人の間で認識の違いが生じた場合に、事実関係を確認するうえで役立ちます。
⑥ その他の関連書類
変更内容によっては、次のような書類も確認します。
- 賃金台帳
- 勤怠管理記録
- 給与計算に関する資料
- 労使協定
- 社会保険・労働保険に関する書類
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との支援委託契約書
ただし、すべての変更で、これらの書類を一律に更新する必要があるわけではありません。実際の変更内容に応じて判断しましょう。

5.外国人本人への説明と同意をどのように進める?
労働条件の変更では、会社が必要な手続きを行うだけでなく、本人が変更内容を十分に理解できるように説明することが重要です。
特に、日本語で書かれた契約書や社内規則の内容を理解することが難しい外国人スタッフに対しては、説明方法にも配慮する必要があります。
説明すべき5つの事項
1.変更する内容
基本給、労働時間、休日、勤務場所など、どの条件が変わるのかを具体的に説明します。
2.変更する理由
人員配置の見直し、業務量の変化など、変更が必要となった理由を伝えます。
3.変更開始日
いつから新しい条件が適用されるのか、明確に説明します。
4.給与や生活への影響
手取り額、勤務時間、通勤方法、生活リズムなどに影響する場合は、その内容を説明します。
5.本人が確認する書類
変更後の雇用条件書などを提示し、本人が内容を確認できるようにします。
本人の理解を確認する方法
必要に応じて、次の方法を活用しましょう。
- やさしい日本語で説明する
- 本人が理解できる言語に翻訳した資料を使用する
- 変更前と変更後の条件を表にして比較する
- 本人から質問を受ける時間を設ける
- 説明後に本人が理解した内容を確認する
- 必要な同意を得た場合は、その記録を保管する
特定技能の雇用条件に関する書類については、本人が十分に理解できる言語で説明し、理解したことを確認したうえで署名を得ることが求められる場面があります。
ただし、本人への説明や署名があれば、どのような労働条件の変更でも有効になるわけではありません。特に、不利益な変更については、労働契約法などに照らした判断が必要です。
6.登録支援機関と受入れ企業の役割分担
特定技能外国人の労働条件を変更する場合は、受入れ企業と登録支援機関の間で、必要な情報を共有することも重要です。
ただし、登録支援機関に支援業務を委託しているからといって、受入れ企業が負うべき雇用管理上の義務や、特定技能所属機関としての届出義務がすべて移るわけではありません。
受入れ企業が確認する事項
受入れ企業は、主に次の事項を確認します。
- 労働条件の変更が適法か
- 雇用契約や就業規則との整合性が取れているか
- 本人への説明や必要な合意が行われているか
- 雇用条件書などが適切に更新されているか
- 入管への届出が必要か
- 必要な届出が期限内に行われているか
- 変更後も特定技能制度の受入れ要件を満たしているか
登録支援機関が支援できる事項
登録支援機関は、委託された支援業務の範囲内で、次のような対応を支援できます。
- 外国人本人への変更内容の説明
- やさしい日本語や母国語による説明の補助
- 本人の理解状況の確認
- 生活面への影響の確認
- 企業担当者との情報共有
- 必要な相談先や公的情報の案内
なお、契約変更に伴う届出書類の作成などを支援する場合も、実際の届出義務者や、資格・権限が関係する業務の範囲を確認する必要があります。
変更内容を共有するときのポイント
例えば、勤務場所が変更される場合は、登録支援機関にも変更内容を共有することで、通勤方法や住居への影響などを確認しやすくなります。
また、勤務シフトの変更により、これまで利用していた交通手段が使えなくなる場合などは、本人の生活面に配慮した対応が必要です。
受入れ企業は雇用管理と必要な手続きを確実に行い、登録支援機関は委託された支援業務を通じて外国人本人の理解や生活面を支える、という役割分担が重要です。
7.労働条件の変更に関する具体的な事例
ここでは、企業の担当者が判断に迷いやすいケースを紹介します。
事例1:基本給を増額した
変更内容:月給22万円から24万円に変更
変更後の給与額、適用開始日、雇用条件書の更新、給与計算への反映などを確認します。
特定技能外国人にとって利益となる一定の賃金増額については、入管への変更届出が不要となる場合があります。
ただし、変更後の条件を書面で管理するなど、必要な実務対応は引き続き行いましょう。
事例2:会社の業績悪化により基本給を減額した
変更内容:月給24万円から22万円に変更
この場合は、本人への説明だけでなく、労働契約法上の要件、変更の必要性、不利益の程度、最低賃金、特定技能制度上の報酬基準などを慎重に確認する必要があります。
また、不利益となる賃金変更については、入管への届出の要否も確認してください。
変更を進める前に、社会保険労務士などの専門家への相談も検討しましょう。
事例3:同じ法人の別施設へ異動した
変更内容:介護施設Aから介護施設Bへ勤務場所を変更
この場合は、雇用契約上の就業場所、変更後の業務内容、雇用条件書、届出の要否などを確認します。
同じ法人内での異動であっても、就業場所が変わる場合は、特定技能雇用契約の変更に関する手続きを確認することが重要です。
事例4:日勤中心から夜勤中心の勤務に変更した
変更内容:日勤中心のシフトから夜勤中心のシフトへ変更
この場合は、労働時間、深夜割増賃金、夜勤手当、休憩時間、健康管理などを確認します。
また、雇用契約上の労働時間などに変更が生じる場合は、雇用条件書の更新や入管への届出の要否についても確認しましょう。
事例5:担当業務を大幅に変更した
変更内容:これまでの業務とは異なる業務を主に担当させる
この場合は、変更後の業務が特定技能の対象業務に含まれるか、雇用契約と一致しているかなどを確認します。
対象分野の要件を満たしているか判断できない場合は、変更を実施する前に、最新の運用要領などを確認してください。
事例6:会社の都合で勤務時間が減少した
変更内容:業務量の減少により、勤務時間を短縮
この場合は、契約上の労働時間、賃金への影響、本人との合意、休業手当などの労働法上の問題がないかを確認する必要があります。
また、特定技能外国人が1か月以上活動できない事由が生じた場合など、受入れ継続が困難となる状況については、別途、受入れ困難に関する届出が必要となることがあります。
勤務時間の短縮が直ちに該当するわけではありませんが、単なる契約変更として処理してよいか、状況に応じて確認しましょう。
8.労働条件を変更するときの実務フロー
企業担当者が手続きを進める際は、次の順番で確認すると、対応漏れを防ぎやすくなります。
| 手順 | 対応内容 | 確認するポイント |
| 1 | 変更理由を整理する | 変更の必要性と対象者 |
| 2 | 変更内容を整理する | 給与、時間、休日、場所、業務など |
| 3 | 法令・契約を確認する | 労働関係法令、雇用契約、就業規則 |
| 4 | 入管手続きの要否を確認する | 届出対象、期限、必要書類 |
| 5 | 本人に説明する | 変更理由、開始日、生活への影響 |
| 6 | 必要な合意を得る | 特に不利益な変更に注意 |
| 7 | 書類を更新する | 雇用契約書、雇用条件書など |
| 8 | 必要な届出を行う | 原則14日以内。対象となる変更を確認 |
| 9 | 関係者と情報共有する | 登録支援機関、社内担当者など |
| 10 | 記録を保管する | 説明記録、契約書、届出の控えなど |
特に注意したいこと
入管への届出期限は、変更内容を社内で確認した日や書類を作成した日ではなく、原則として変更事由が発生した日を基準に確認します。
そのため、労働条件を変更する際は、変更日を明確にし、届出が必要な場合に期限を過ぎないよう管理することが重要です。
また、届出が不要となる変更であっても、雇用条件書などの書類を適切に管理し、会社と本人が変更後の条件を確認できるようにしておきましょう。
9.特定技能外国人の労働条件変更チェックリスト
労働条件を変更する際は、以下のチェックリストを活用してください。
| 確認項目 | 確認内容 | チェック |
| 変更理由 | 変更する理由が明確になっているか | □ |
| 変更内容 | 変更する項目と開始日が明確か | □ |
| 労働関係法令 | 労働関係法令に違反していないか | □ |
| 雇用契約 | 雇用契約書との整合性を確認したか | □ |
| 就業規則 | 就業規則との整合性を確認したか | □ |
| 給与 | 最低賃金や報酬基準を満たしているか | □ |
| 日本人との報酬比較 | 同等の業務に従事する日本人との報酬比較に問題がないか | □ |
| 労働時間 | 所定労働時間、休憩、休日などが適切か | □ |
| 業務内容 | 変更後の業務が特定技能の対象範囲内か | □ |
| 勤務場所 | 変更後の勤務場所で適切に受入れができるか | □ |
| 本人への説明 | 本人が理解できる言語で説明したか | □ |
| 本人の合意 | 必要な合意を得ているか | □ |
| 書類の更新 | 必要な雇用契約書や雇用条件書を更新したか | □ |
| 入管への届出 | 届出の要否、期限、必要書類を確認したか | □ |
| 支援体制 | 必要に応じて登録支援機関と情報共有したか | □ |
| 記録の保管 | 説明記録や契約書などを保管したか | □ |
このチェックリストを社内の労務管理フローに取り入れることで、確認漏れを防ぎ、適切な外国人雇用につなげることができます。
まとめ|特定技能外国人の労働条件変更は、事前確認と適切な手続きが重要
特定技能外国人の労働条件を変更する際には、給与、労働時間、休日、勤務場所、担当業務、雇用契約期間など、変更する項目ごとに必要な確認を行うことが重要です。
特に、企業担当者は次の5点を意識しましょう。
1.労働関係法令と雇用契約を確認する
労働条件の変更が適法かどうか、雇用契約や就業規則との整合性を確認します。
2.本人に分かりやすく説明する
変更理由、開始日、給与や生活への影響などを、本人が理解できる言語で丁寧に説明します。
3.必要な書類を更新する
雇用契約書、雇用条件書、労働条件通知書などについて、変更内容に応じて適切に更新・管理します。
4.入管への届出を確認する
特定技能雇用契約の変更は、原則として変更事由が発生した日から14日以内に届出が必要です。ただし、一定の変更については届出が不要となる場合があるため、最新の案内に基づいて判断しましょう。
5.受入れ企業と登録支援機関が連携する
雇用管理上の対応と支援業務の役割分担を明確にし、外国人スタッフが安心して働ける環境を整えます。
外国人材の雇用では、採用時だけでなく、採用後の労務管理や継続的な支援も重要です。
受入れ企業が適切な労務管理と必要な手続きを行い、登録支援機関と連携して分かりやすい説明を行うことで、外国人スタッフとの信頼関係を築き、長期的な職場定着につなげましょう。


