外国人社員を採用した企業では、入社後に「聞いていた仕事内容と違う」「給与が思っていたより少ない」「職場のルールを知らなかった」「寮の使い方でトラブルになった」といった問題が起こることがあります。
こうしたトラブルの中には、外国人社員がルールを守らないことだけが原因ではなく、入社前・入社時の説明が十分に伝わっていなかったことが原因となっているケースもあります。
特に特定技能外国人を受け入れる場合は、仕事の内容だけではなく、雇用条件、日本での生活、行政手続き、相談方法などについても、本人が理解できるように説明することが重要です。
特定技能1号については、受入れ企業または登録支援機関による支援が制度上位置付けられており、生活オリエンテーションや相談対応、定期的な面談などの支援に関する管理も求められています。
この記事では、外国人社員とのトラブルを防ぐために、企業が入社前から入社後までに確認・説明しておきたいポイントを詳しく解説します。
外国人社員とのトラブルは「入社後」だけの問題ではない
外国人社員とのトラブルを防ぐためには、問題が発生してから対応するのではなく、採用・入社の段階から「分かりやすく説明すること」が重要です。
例えば、次のようなトラブルが考えられます。
- 聞いていた給与と実際の手取り額が違う
- 思っていた仕事内容と違う
- 残業について理解していなかった
- 有給休暇の取得方法を知らなかった
- 遅刻・欠勤時の連絡方法を知らなかった
- 職場でスマートフォンを使用してしまった
- 寮で騒音やゴミ出しの問題が発生した
- 共用スペースの使い方をめぐって入居者同士で問題になった
- 体調不良になったが、誰に相談すればよいか分からなかった
- 在留期間の更新について確認が遅れた
これらの問題をすべて「外国人だから起きる問題」と考えるのではなく、企業側と外国人社員の双方がルールや情報を共有できていたかという視点で考えることが大切です。

1.採用時から「仕事内容」を具体的に伝える
入社後のミスマッチを防ぐためには、仕事内容をできるだけ具体的に説明する必要があります。
例えば、
- 実際に担当する業務
- 1日の仕事の流れ
- 勤務する場所
- 夜勤の有無
- シフト勤務の有無
- 重い物を持つ仕事があるか
- 他のスタッフとの役割分担
- 入社後に受ける研修
- 将来的に担当する可能性のある業務
などです。
特に求人票や面接時に説明した内容と、入社後の実際の仕事内容に大きな違いがあると、外国人社員が「話が違う」と感じる可能性があります。
そのため、採用時から仕事内容を具体的に共有し、入社後の認識の違いをできるだけ減らしましょう。
2.雇用条件を分かりやすく説明する
入社時には、外国人社員が自分の雇用条件を正しく理解できるように説明することが重要です。
特に次の項目は、本人が確認できるようにしておきましょう。
- 基本給
- 給与の支払日
- 勤務時間
- 休憩時間
- 休日・休暇
- 残業の有無
- 残業が発生した場合の扱い
- 社会保険
- 税金
- 給与から控除される費用
- 住居費など本人が負担する費用
- その他の費用
外国人社員の場合、日本の給与明細や税金、社会保険の仕組みを十分に理解していない場合があります。
例えば、求人や面接時に「月給25万円」と説明されていても、実際の給与明細では社会保険料や税金などが控除されます。
そのため、「給与はいくらか」だけではなく、「何が支給され、何が控除されるのか」まで説明することが大切です。

3.勤務時間・残業・休日について説明する
勤務時間についても、できるだけ具体的に説明しましょう。
例えば、
- 始業時間
- 終業時間
- 休憩時間
- シフト
- 夜勤
- 残業
- 休日
- 有給休暇
- シフト変更の方法
などです。
「残業があります」とだけ説明するのではなく、
「残業が発生する場合があります」
「残業については会社のルールに従います」
など、実際の勤務形態を分かりやすく説明することが重要です。
また、遅刻や欠勤についても、具体的な連絡方法を伝えましょう。
例えば、
遅刻しそうな場合
「始業時間の前までに、○○さんへ電話してください。」
体調不良で休む場合
「会社の担当者へ電話し、休む理由を伝えてください。」
というように、誰に・いつ・どの方法で連絡するのかまで説明すると、認識の違いを防ぎやすくなります。
4.職場のルールを「常識」と考えずに説明する
企業側にとって当たり前のルールでも、外国人社員にとっては初めて聞く内容である場合があります。
例えば、
- 制服の着用
- 身だしなみ
- スマートフォンの使用
- 休憩時間
- 写真撮影
- SNSへの投稿
- 職場の備品の使用
- 更衣室の利用
- 喫煙場所
- 他の従業員とのコミュニケーション
などです。
「これは普通のことだから説明しなくても分かる」と考えるのではなく、会社独自のルールは入社時に明確に説明することが大切です。

5.職場でのコミュニケーションについて伝える
外国人社員とのトラブルを防ぐためには、仕事のルールだけでなく、コミュニケーションについても説明しておくことが重要です。
例えば、
- 分からないことがあったら質問する
- ミスをした場合は報告する
- 体調が悪い場合は相談する
- 仕事で困った場合は一人で抱え込まない
- 指示が理解できない場合は確認する
といった基本的な行動を伝えておきましょう。
特に日本語にまだ慣れていない外国人社員の場合、分からないことがあっても「分かりません」と言えず、そのまま仕事を続けてしまうことがあります。
その結果、仕事上のミスや安全上の問題につながる可能性があります。
そのため、企業側から、
「分からないときは質問して大丈夫です」
と伝えておくことも大切です。
6.ハラスメントについても説明する
外国人社員を受け入れる場合、ハラスメントについても分かりやすく説明しておくと安心です。
例えば、
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
- 差別的な発言
- 国籍を理由とした嫌がらせ
- 必要以上に大声で叱る
- SNSなどを利用した嫌がらせ
などです。
外国人社員側にも、困ったことがあれば相談できる窓口を伝えておきましょう。
同時に、外国人社員に対しても、他の従業員への嫌がらせや不適切な言動をしてはいけないことを説明することが重要です。

7.寮・社宅・アパートのルールを説明する
外国人社員が会社の寮や社宅、アパートで生活する場合は、仕事以外の生活面についても事前に説明しましょう。
例えば、
- ゴミ出し
- 騒音
- 共用スペース
- キッチン
- 浴室
- トイレ
- 洗濯機
- 喫煙
- 来客
- 駐車場
- 駐輪場
- 清掃
- 家具・家電
- 火災・防災
などです。
特に複数人が同じ住宅に住む場合は、共用スペースの使い方を明確にしておくことが重要です。
例えば、
「使用後はキッチンを掃除する」
「夜間は大きな音を出さない」
「ゴミは決められた曜日に出す」
「共用スペースに私物を置かない」
など、具体的なルールにすると伝わりやすくなります。

8.日本の生活ルールを説明する
日本で初めて生活する外国人社員の場合、地域の生活ルールを知らないことがあります。
特に次の内容は、入国後・入社時の生活オリエンテーションなどで確認しておくとよいでしょう。
- ゴミの分別
- ゴミを出す曜日
- 自転車の利用
- 交通ルール
- 防災
- 火災時の対応
- 地域のルール
- 近隣住民への配慮
- 騒音
- 公共施設の利用方法
特定技能1号の支援では、生活オリエンテーションに関する実施内容や記録についても管理事項が定められています。
そのため、単に「生活ルールを説明した」で終わらせるのではなく、いつ、どこで、誰が、どのような内容を説明したのかを整理しておくことが重要です。
9.病院・体調不良時の対応方法を伝える
外国人社員が日本で生活するうえで、病院の利用方法を知っておくことも重要です。
入社時には、
- 体調が悪くなった場合の相談先
- 会社への連絡方法
- 近隣の医療機関
- 健康保険証等の利用方法
- 緊急時の連絡方法
- 夜間・休日に体調が悪くなった場合の対応
などを確認しておくと安心です。
特に介護・医療・外食・宿泊など、人と接する仕事では、体調不良時の連絡ルールを明確にしておくことが大切です。
10.在留カード・在留期間について確認する
外国人社員を雇用する企業にとって、在留資格や在留期間の確認も重要です。
特定技能1号では、在留資格に基づいて従事できる活動が定められています。出入国在留管理庁も、特定技能について分野ごとの制度・手続きや必要な情報を案内しています。
企業側では、
- 在留カードの確認
- 在留資格の確認
- 在留期間の確認
- 更新時期の確認
- 必要な届出・手続きの確認
- 仕事内容が在留資格の範囲に合っているかの確認
などを適切に行う必要があります。
在留期間の更新など期限がある手続きについては、期限直前ではなく、余裕を持って確認することが重要です。
11.行政手続きについてもサポートする
外国人社員が日本で生活するためには、仕事以外にもさまざまな手続きがあります。
例えば、
- 住居に関する手続き
- 住所変更
- マイナンバー関係
- 銀行口座
- 携帯電話・SIM
- 健康保険
- 年金
- 税金
- その他の生活関連手続き
などです。
これらについて、外国人社員本人だけに任せるのではなく、必要に応じて会社や登録支援機関がサポートできる体制を作っておくと安心です。
12.困ったときの相談先を明確にする
外国人社員が問題を抱えたとき、
「誰に相談すればいいか分からない」
という状態を作らないことが重要です。
入社時に、次のような相談先を伝えておきましょう。
仕事について
- 現場責任者
- 上司
- 人事担当者
生活について
- 会社の担当者
- 登録支援機関
- 必要な行政機関
緊急時
- 会社の緊急連絡先
- 必要に応じた医療機関・公的機関
また、電話番号だけではなく、誰に何を相談できるのかまで説明しておくと分かりやすくなります。

13.日本語での理解度を確認する
外国人社員とのトラブルを防ぐうえで、とても重要なのが「説明したか」ではなく、「相手が理解できたか」を確認することです。
例えば、会社側が日本語で30分説明しても、本人が十分理解できていなければ、実際には説明が完了したとは言いにくい場合があります。
そのため、
- やさしい日本語を使う
- 一度に多く説明しすぎない
- 写真や図を使う
- 母語での説明を活用する
- 通訳を利用する
- 本人から質問してもらう
- 最後に理解した内容を確認する
といった方法が有効です。
特に重要なルールについては、「分かりましたか?」だけで終わらせず、
「遅刻する場合はどうしますか?」
「休む場合は誰に連絡しますか?」
など、具体的に確認すると理解度を確認しやすくなります。

14.入社時の説明内容を記録する
企業側にとっても、入社時にどのような説明を行ったのかを記録しておくことが重要です。
例えば、
- 説明日
- 説明場所
- 説明担当者
- 通訳者
- 説明内容
- 使用した資料
- 本人からの質問
- 回答内容
- 本人の確認
などです。
特定技能1号の支援についても、生活オリエンテーションや相談対応などについて、実施内容や担当者等の記録を管理することが示されています。
そのため、「説明したつもり」ではなく、説明・確認・記録までを一つの流れとして管理することが重要です。
15.入社後も定期的にフォローする
トラブル防止は入社日だけで終わりではありません。
入社して1週間、1か月、3か月など、必要に応じて状況を確認することで、早い段階で問題を発見できる場合があります。
例えば、
- 仕事に慣れたか
- 日本語で困っていないか
- 職場の人間関係に問題がないか
- 給与について疑問がないか
- 住居で困っていないか
- 体調に問題がないか
- 生活面で困っていないか
- 今後の仕事について希望があるか
などを確認します。
特定技能1号では、定期的な面談に関する管理も支援業務の一つとして位置付けられています。
問題が大きくなってから対応するのではなく、小さな不安の段階で相談できる環境を作ることが大切です。
16.外国人社員からの相談を「トラブル」と考えすぎない
外国人社員から、
「仕事が難しい」
「日本語が分からない」
「寮で困っている」
「同僚とのコミュニケーションがうまくいかない」
と相談された場合、それを単純に「問題を起こしている」と考えるのではなく、早期相談の機会として捉えることも重要です。
相談できる環境があることで、問題が大きくなる前に対応できる可能性があります。
企業側も、
「困ったら早めに相談してください」
と日頃から伝えておきましょう。
17.企業側の担当者を決めておく
外国人社員を受け入れる企業では、誰が外国人社員の担当者なのかを明確にしておくことも重要です。
例えば、
外国人社員 → 現場責任者 → 人事担当者 → 登録支援機関
というように、相談・連絡の流れを決めておきます。
担当者が明確であれば、外国人社員が困ったときにも相談しやすくなります。
また、会社側でも「誰が対応するのか分からない」という状態を防ぐことができます。
18.入社時チェックリストを活用する
外国人社員を受け入れる企業では、毎回同じ内容を確認できるように「入社時チェックリスト」を作成しておくと便利です。
外国人社員・入社時チェックリスト
□ 仕事内容を説明した
□ 雇用条件を説明した
□ 基本給・給与支払日を説明した
□ 給与からの控除について説明した
□ 勤務時間を説明した
□ 休憩時間を説明した
□ 休日・休暇を説明した
□ 残業について説明した
□ 遅刻・欠勤時の連絡方法を説明した
□ 職場のルールを説明した
□ スマートフォンの使用ルールを説明した
□ 安全に関するルールを説明した
□ ハラスメントについて説明した
□ 寮・住居のルールを説明した
□ ゴミ出しなど生活ルールを説明した
□ 交通ルールを説明した
□ 緊急時の連絡先を伝えた
□ 病院・体調不良時の相談方法を説明した
□ 在留資格・在留期間を確認した
□ 必要な行政手続きについて説明した
□ 相談窓口を伝えた
□ 日本語での理解度を確認した
□ 本人からの質問を確認した
□ 説明内容を記録した
外国人社員とのトラブルを防ぐために企業が意識したい5つのポイント
ここまでの内容をまとめると、企業が特に意識したいポイントは次の5つです。
① 「当たり前」を説明する
会社側には当たり前でも、外国人社員には初めてのルールかもしれません。
② 具体的に伝える
「気をつけてください」ではなく、「いつ・誰に・どうするのか」まで説明します。
③ 理解できたか確認する
説明しただけで終わらず、本人が理解したかを確認します。
④ 記録を残す
重要な説明や相談について、日時・内容・対応を記録します。
⑤ 入社後もフォローする
入社時だけではなく、定期的に状況を確認します。
登録支援機関がサポートできること
特定技能1号の受入れでは、外国人社員が仕事だけでなく、日本で安心して生活できるように支援体制を整えることが重要です。
出入国在留管理庁は、特定技能1号について、受入れ企業または登録支援機関による支援に関する情報を公開しています。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、定期的な面談など、さまざまな支援項目があります。
登録支援機関を活用することで、企業側の担当者だけでは対応が難しい、
- 外国人社員への生活説明
- 生活上の相談
- 日本語でのコミュニケーション支援
- 行政手続きに関するサポート
- 相談内容の確認・記録
- 定期的な面談
- 企業と外国人社員との間のコミュニケーション
などについて、支援体制を整えやすくなります。
ただし、具体的な支援内容や企業・登録支援機関それぞれの役割は、外国人社員の在留資格や支援計画、契約内容などを踏まえて確認する必要があります。

まとめ|トラブル防止は「採用後の支援」まで考える
外国人社員とのトラブルを防ぐためには、外国人社員にルールを守ってもらうことだけを考えるのではなく、企業側が必要な情報を分かりやすく伝え、理解を確認し、継続的にフォローすることが重要です。
特に入社時には、
仕事内容
↓
雇用条件
↓
勤務ルール
↓
職場のルール
↓
住居・生活ルール
↓
相談先
↓
在留資格・必要な手続き
まで、できるだけ具体的に確認しておきましょう。
そして、入社後も定期的に面談や相談の機会を設けることで、問題を早期に把握しやすくなります。
外国人材の受入れは、採用して終わりではありません。
「採用する → 受け入れる → 仕事を覚えてもらう → 生活を支援する → 定着をサポートする」
という継続的な受入れ体制を整えることが、企業と外国人社員の双方にとって重要です。
外国人材の受入れや特定技能外国人の支援体制について不安がある企業は、登録支援機関への相談を活用することもできます。
※本記事は2026年9月時点の公開情報をもとに作成しています。特定技能制度の手続き・支援要件等は変更される場合があるため、実際の受入れ・支援を行う際は出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。



