外国人社員が日本で安心して生活を始めるためには、仕事の説明だけでなく、銀行口座・携帯電話・住居・電気・ガス・水道など、生活に必要な契約を整えるためのサポートも重要です。
特に1号特定技能外国人については、受入れ機関が「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、その計画に基づいて支援を行う必要があります。
出入国在留管理庁は、支援項目の一つとして「住居確保・生活に必要な契約支援」を定めており、銀行口座等の開設、携帯電話やライフラインの契約などについて、案内や手続の補助を行うことを示しています。
今回は、受入れ企業や登録支援機関が外国人社員をサポートするときに確認しておきたいポイントを、実務面から詳しく解説します。
1.まず「支援」と「契約」を区別する
外国人社員の生活支援で最も重要なポイントの一つが、支援者が本人に代わってすべての契約を決めるのではなく、本人が内容を理解したうえで契約できるようにサポートすることです。
例えば、
・銀行口座の開設方法を案内する
・銀行窓口への同行をする
・携帯電話会社を紹介する
・契約内容を分かりやすく説明する
・不動産会社を紹介する
・必要に応じて住居探しに同行する
・電気・ガス・水道などの手続きを補助する
といった支援が考えられます。
出入国在留管理庁も、銀行口座等の開設や携帯電話・ライフラインの契約について、「案内・各手続の補助」を支援内容として示しています。
したがって、**「全部こちらで決めてしまう」のではなく、「本人が理解して選択できるようにする」**ことが基本です。

2.銀行口座の開設をサポートするときの注意点
外国人社員が日本で生活するためには、給与受取や家賃・公共料金の支払いなどのため、銀行口座が必要になることがあります。
銀行口座の開設を支援するときは、事前に必要書類や銀行ごとの条件を確認しましょう。
主な確認事項
・在留カード
・住所
・電話番号
・本人確認書類
・勤務先情報
・在留期間
・必要に応じた勤務先の情報
などを確認します。
ただし、必要書類や手続方法は金融機関によって異なるため、「外国人だからこの書類があれば必ず開設できる」と決めつけないことが大切です。
金融庁も、外国人が日本で預貯金口座を利用する際の情報や注意点を多言語で案内しています。
在留期間の更新時にも注意
外国人社員の在留期間が更新された場合は、金融機関に更新済みまたは更新申請中であることを届け出る必要が生じる場合があります。
そのため、在留カードの更新だけでなく、銀行への届出についても本人に案内することが重要です。

3.銀行口座の「管理」は本人にしてもらう
支援するときに特に注意したいのが、キャッシュカードや暗証番号などの管理です。
基本的には、
銀行口座は本人が管理する
という考え方で支援しましょう。
例えば、
・キャッシュカードを会社で保管する
・暗証番号を会社が把握する
・通帳を長期間会社が預かる
・本人の知らないところで口座を利用する
といったことは避ける必要があります。
外国人社員が日本の銀行制度に慣れていない場合でも、本人が自分で口座を管理できるように説明することが重要です。
4.携帯電話の契約をサポートするとき
携帯電話は、仕事だけでなく、
・会社との連絡
・病院への連絡
・行政手続き
・銀行からの連絡
・災害時の情報収集
・緊急時の連絡
などにも使用されるため、日本で生活するうえで重要なものです。
契約をサポートするときは、単にSIMカードを渡すだけではなく、本人が契約内容を理解しているか確認しましょう。
確認したいポイント
・月額料金
・初期費用
・端末代金
・通信容量
・通話料金
・契約期間
・解約条件
・違約金等の有無
・支払方法
・SIMカードの種類
・端末の利用方法
などです。
特に、外国人社員が日本語の契約内容を十分に理解できない場合は、本人が理解できる言語や分かりやすい日本語で説明することが大切です。

5.携帯電話は「会社名義」と「本人名義」を確認する
会社が携帯電話を用意する場合には、誰の名義で契約するのかを明確にしておきましょう。
例えば、
本人名義
なのか、
会社名義
なのかによって、退職時や転職時の対応も変わります。
そのため、契約時に、
・契約名義
・料金の負担者
・端末の所有者
・退職時の返却方法
・解約方法
・番号を継続できるか
などを確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

6.住居を探すときの注意点
外国人社員の住居探しでは、日本の賃貸契約に慣れていないことが大きな問題になる場合があります。
支援する場合は、本人の希望や給与水準、勤務先までの距離などを考慮して物件を探します。
例えば、
・家賃
・勤務先までの距離
・最寄り駅
・交通手段
・間取り
・家具・家電の有無
・外国人入居可否
・保証会社の利用可否
・初期費用
・周辺環境
などを確認します。
出入国在留管理庁は、住居確保の支援として、希望する物件情報の提供、不動産仲介業者の紹介、必要に応じた住居探しへの同行などを示しています。

7.「外国人OK」だけでなく契約条件を確認する
外国人社員の住居を探す場合、
「外国人OKの物件だから大丈夫」
だけでは不十分です。
実際の契約条件について、
・家賃
・共益費
・敷金
・礼金
・仲介手数料
・保証会社費用
・火災保険
・鍵交換費用
・クリーニング費用
・更新料
・退去時費用
などを確認しましょう。
特に初期費用が高額になる場合は、本人が支払う金額を事前に明確に説明することが重要です。
8.保証人・保証会社について確認する
外国人社員が賃貸住宅を契約するとき、保証人や保証会社が必要になることがあります。
1号特定技能外国人については、適切な住居を確保するための支援が求められています。
出入国在留管理庁の資料では、必要な場合に受入れ機関が連帯保証人になることや、利用可能な家賃債務保証業者を確保することなどが支援方法として示されています。
ただし、住居費そのものを必ず受入れ機関が負担しなければならないという意味ではありません。
実際に誰が、
・家賃
・保証会社費用
・初期費用
・更新費用
を負担するのかを明確にしておきましょう。
9.社宅を提供する場合も説明が必要
会社が社宅や所有する住宅を外国人社員に提供することも可能です。
その場合でも、
・家賃
・共益費
・光熱費
・Wi-Fi費用
・備品費用
・退去時の費用
などについて、本人に分かりやすく説明しておくことが重要です。
また、給与から控除する費用がある場合には、何の費用がいくら控除されるのかを明確にすることが大切です。
10.電気・ガス・水道・インターネットも忘れない
住居契約が終わっても、生活に必要な契約がすべて完了したとは限りません。
入居前後には、
・電気
・ガス
・水道
・インターネット
・Wi-Fi
などについても確認しましょう。
特にガスについては、開栓時に立会いが必要になるケースがあります。
外国人社員が日本語での電話対応に不安がある場合は、必要に応じて手続きの案内や同行・補助を行います。

11.住所変更などの行政手続きも確認する
住居が決まったら、住民登録など必要な手続きを確認します。
必要に応じて、
・市区町村役場
・マイナンバー関係
・国民健康保険等
・税関係
・郵便関係
などの手続きを案内します。
出入国在留管理庁の支援項目には、必要に応じて住居地や社会保障、税などの公的手続への同行や書類作成の補助も含まれています。

12.「本人が理解したか」を確認する
生活支援で非常に重要なのが、単に「説明した」だけで終わらないことです。
例えば、
「説明しました」
だけではなく、
「本人が内容を理解しているか」
を確認しましょう。
確認したい内容は、
・毎月いくら支払うのか
・いつ支払うのか
・誰が支払うのか
・契約期間はいつまでか
・解約するときはどうするのか
・退去時に費用が発生するのか
などです。
必要に応じて、本人の母語や英語、やさしい日本語などを使用して説明すると、理解しやすくなります。
13.契約書・説明資料を本人に渡す
支援者だけが契約内容を把握している状態は避けましょう。
可能な限り、
・契約書
・利用料金
・支払方法
・連絡先
・解約方法
・緊急連絡先
などを本人が確認できるようにします。
また、本人が後から確認できるよう、重要な書類を整理して保管するよう案内すると安心です。
14.支援した内容を記録する
登録支援機関や受入れ機関にとって、支援した内容を記録しておくことも重要です。
例えば、
・支援実施日
・支援対象者
・支援内容
・同行した場所
・説明した内容
・契約内容
・住居情報
・担当者
などを記録します。
現在の特定技能の運用要領でも、住居確保や契約支援について、住居の住所・形態・家賃、支援した契約内容、担当者などを記録することが示されています。
**「誰に、いつ、何を、どのように支援したのか」**を後から確認できる状態にしておくことが大切です。

15.退職・転職するときの契約にも注意
外国人社員が退職・転職する場合は、生活契約についても確認が必要です。
例えば、
銀行
・口座を本人が継続利用できるか
・住所変更が必要か
携帯電話
・本人名義か会社名義か
・会社名義の場合の解約・名義変更
・端末の返却が必要か
住居
・退去するのか
・契約を継続するのか
・次の勤務先へ移動するのか
・退去費用は誰が負担するのか
などを確認します。
退職日だけを確認して、銀行・携帯電話・住居の契約を確認しないと、後からトラブルになる可能性があります。
16.生活支援でよくあるトラブル
実務では、次のような問題が起こる可能性があります。
ケース①
外国人社員が携帯電話の料金を理解しておらず、高額な請求になった。
→ 契約時に月額料金・端末代・オプションなどを確認する。
ケース②
会社が社宅費を給与から控除しているが、本人が何の費用なのか理解していない。
→ 家賃・共益費・光熱費などを明確に説明する。
ケース③
退職後も会社名義の携帯電話を使用している。
→ 契約名義と退職時の対応を契約時から確認しておく。
ケース④
在留期間が更新されたが、銀行への届出をしていない。
→ 在留カード更新後、必要に応じて金融機関への届出を案内する。
17.支援担当者が使えるチェックリスト
外国人社員の生活開始時には、次のようなチェックリストを使用すると便利です。
銀行
□ 口座開設方法を説明した
□ 必要書類を確認した
□ 本人が契約内容を理解した
□ キャッシュカード等の管理方法を説明した
□ 在留期間更新時の金融機関への届出を案内した
携帯電話
□ 契約名義を確認した
□ 月額料金を説明した
□ 通信容量を説明した
□ 端末代金を確認した
□ 解約・変更方法を説明した
□ 退職時の対応を確認した
住居
□ 希望条件を確認した
□ 物件情報を提供した
□ 不動産会社を紹介した
□ 必要に応じて同行した
□ 家賃・共益費を説明した
□ 初期費用を説明した
□ 保証会社について説明した
□ 退去時の費用を確認した
ライフライン
□ 電気
□ ガス
□ 水道
□ インターネット
□ Wi-Fi
行政手続き
□ 住所関係
□ 社会保障関係
□ 税関係
□ 必要なその他の手続き
支援記録
□ 支援日を記録した
□ 支援内容を記録した
□ 契約内容を記録した
□ 担当者を記録した
□ 必要書類を整理した
まとめ
外国人社員の生活支援では、単に「手続きをしてあげる」だけではなく、
「本人が契約内容を理解し、自分で日本での生活を管理できるようにする」
という視点が重要です。
銀行口座、携帯電話、住居、電気・ガス・水道などは、日本で生活するための基本的なインフラです。
受入れ企業や登録支援機関は、
① 本人に分かりやすく説明する
② 必要な手続きを補助する
③ 本人の意思を確認する
④ 契約内容・費用を明確にする
⑤ 支援内容を記録する
⑥ 契約後も必要に応じてフォローする
という流れで支援すると、生活上のトラブルを防ぎやすくなります。
特に1号特定技能外国人については、支援計画に基づく支援が必要となるため、最新の出入国在留管理庁の運用要領やQ&Aを確認しながら対応することが重要です。
※本記事は2026年9月時点の公開情報をもとに作成しています。制度や運用は変更される場合があるため、実際の支援を行う際は、出入国在留管理庁、金融庁、各金融機関、不動産会社、携帯電話事業者等の最新情報をご確認ください。



