はじめに
特定技能外国人を採用したら、企業にとって本当のスタートは「入社日」です。
採用面接や在留資格の手続きが無事に終わっても、入社後に、
- 仕事内容がよく分からない
- 日本人スタッフとのコミュニケーションが難しい
- 給料や控除について理解できない
- 会社のルールが分からない
- 遅刻・欠勤するとき誰に連絡すればよいか分からない
- 住居や生活面で困っている
- 何か問題があっても誰に相談すればよいか分からない
といった問題が起きることがあります。
特に外国人材にとって、入社初日は「これから日本で安心して働けるか」を判断する重要な日です。
そのため企業は、単に仕事内容を説明するだけではなく、仕事・安全・給与・会社ルール・生活・相談先まで分かりやすく説明することが大切です。
また、特定技能1号については、受入れ企業が支援計画に基づく支援を行う必要があり、登録支援機関に支援を委託することもできます。
この記事では、特定技能外国人の入社前から入社初日、入社後のフォローまで、企業が確認しておきたいポイントをまとめます。
1.入社初日は「仕事の説明」だけではありません
特定技能外国人の入社初日に企業が確認・説明したい内容は、大きく分けると次の6つです。
① 職場について
- 会社・事業所の場所
- 更衣室
- トイレ
- 休憩室
- 食堂
- 喫煙場所
- 駐車場・駐輪場
- 避難場所
- 現場責任者
② 仕事について
- 担当する仕事内容
- 1日の仕事の流れ
- 使用する道具・機械
- 作業手順
- やってはいけないこと
- 分からないときの確認方法
③ 勤務条件について
- 始業時間
- 終業時間
- 休憩時間
- 休日
- シフト
- 残業
- 有給休暇
- 遅刻・欠勤時の連絡方法
④ 給与について
- 基本給
- 給料日
- 残業代
- 深夜勤務
- 休日勤務
- 各種手当
- 社会保険
- 税金
- その他の控除
- 給与明細
⑤ 日本での生活について
- 住居
- 電気・ガス・水道
- 銀行
- 携帯電話
- ゴミ出し
- 交通ルール
- 病院
- 市役所
- 防災
⑥ 相談・支援について
- 会社の相談担当者
- 登録支援機関
- 緊急連絡先
- 仕事の相談
- 生活の相談
- 困ったときの連絡方法
2.入社前に企業が準備しておくこと
入社初日をスムーズにするためには、実は「入社前の準備」が重要です。
入社前チェック
□ 雇用契約書・労働条件通知書を準備
□ 在留カード等を確認
□ 勤務場所を確認
□ 仕事内容を確認
□ 勤務時間・休日を確認
□ 給料・給与支払日を確認
□ 制服・作業服を準備
□ 安全靴・ヘルメット等を準備
□ タイムカード・勤怠システムを準備
□ 社内ルールを準備
□ 緊急連絡先を確認
□ 職場の担当者を決める
□ 通勤方法を確認
□ 住居の準備状況を確認
□ 登録支援機関との役割分担を確認
「誰が何を説明するのか」を入社前に決めておくことも重要です。
3.入社初日はまず「会社・職場」を案内する
初めて勤務する外国人材にとって、職場の中は分からないことばかりです。
最初に会社・職場を案内しましょう。
案内する場所
- 自分の勤務場所
- 更衣室
- トイレ
- 休憩室
- 食堂
- 喫煙場所
- 駐車場
- 駐輪場
- ゴミを捨てる場所
- 避難場所
- AED・消火器などの場所
- 上司・担当者の席
さらに、
「困ったときは誰に聞けばいいのか」
を本人に分かるようにしておくことが大切です。
4.勤務時間・休日・休暇を具体的に説明する
外国人材にとって、日本の勤務ルールは分かりにくい場合があります。
そのため、雇用契約書を渡すだけではなく、実際の勤務方法を説明しましょう。
説明する内容
- 何時に出勤するか
- 何時から仕事が始まるか
- 休憩は何時か
- 何時に仕事が終わるか
- 休日はいつか
- シフトはどう決まるか
- 残業がある場合のルール
- 有給休暇の取得方法
- 遅刻した場合の連絡方法
- 欠勤する場合の連絡方法
例えば、
「体調不良で仕事を休む場合は、誰に、何時までに、どの方法で連絡するのか」
まで具体的に説明します。
5.仕事内容を「見せながら」説明する
外国人材に仕事内容を説明するとき、長い日本語だけで説明するのはおすすめできません。
特に日本語能力がまだ十分でない場合は、
説明 → 実演 → 本人にやってもらう → 確認
という流れが効果的です。
例えば
- 作業内容を説明する
- 実際に作業を見せる
- 本人に作業してもらう
- 間違いがあれば修正する
- 最後に本人に手順を説明してもらう
「分かりましたか?」と聞くだけでは、本当に理解しているか分からないことがあります。
例えば、
「分からないときは誰に確認しますか?」
「機械に問題があった場合はどうしますか?」
など、本人に答えてもらうことで理解度を確認できます。

6.安全教育は入社初日に必ず行う
仕事内容と同じくらい重要なのが安全教育です。
特に、
- 工場
- 建設
- 農業
- 介護
- 運送
- 飲食
- 清掃
などの仕事では、安全ルールを具体的に説明する必要があります。
安全教育の例
- 作業中の危険場所
- 使用禁止の機械
- 保護具の使用方法
- 転倒・転落防止
- 火災時の対応
- 地震時の対応
- 事故発生時の対応
- ケガをした場合の報告方法
- 交通安全
- 感染症対策
- 緊急連絡先
「危ないので気をつけてください」だけでは不十分です。
何が危険なのか、どうすれば安全なのか、事故が起きたらどうするのかまで説明しましょう。

7.給与についても入社初日に確認する
給与は外国人材が特に気にするポイントの一つです。
「給料はいくらです」と伝えるだけではなく、実際に給与明細を見ながら説明すると分かりやすくなります。
確認する項目
- 基本給
- 時給・月給
- 給料日
- 残業代
- 深夜勤務手当
- 休日勤務
- 交通費
- その他手当
- 社会保険
- 税金
- 住居費等の控除
- その他の控除
- 手取り額
- 給与明細の見方
特定技能外国人の報酬は、同じ仕事をする日本人と比較して適切な水準であることが重要です。
また、本人が「求人票で見た給与」と「実際の手取り額」を混同しないよう、控除についても分かりやすく説明することが大切です。
8.会社独自のルールを説明する
会社には法律以外にも、独自のルールがあります。
例えば、
- 制服の着用
- 髪型・身だしなみ
- スマートフォンの使用
- 写真撮影
- SNSへの投稿
- 食事・休憩
- 私物の管理
- 駐車場の利用
- 遅刻・欠勤
- 職場での言葉遣い
- あいさつ
- 報告・連絡・相談
などです。
外国人材にとって「普通だと思っていたこと」が、会社では禁止されている場合もあります。
そのため、入社初日に明確に説明しておきましょう。
9.生活面のサポートも重要
仕事だけではなく、日本で生活するための情報も重要です。
特定技能1号の支援では、住居確保、銀行口座・携帯電話などの契約支援、生活オリエンテーション、相談対応など、生活に関する支援が重要な位置を占めています。
生活面で確認すること
住居
- 住所
- 家賃
- 契約内容
- ゴミ出し
- 騒音などの生活ルール
ライフライン
- 電気
- ガス
- 水道
- インターネット
銀行
- 給料振込口座
- キャッシュカード
- ATMの利用方法
携帯電話
- 契約状況
- 料金
- 支払い方法
行政
- 市区町村で必要な手続き
- 住所関連の手続き
- 税金
- 健康保険
- 年金
生活
- ゴミ出し
- 電車・バス
- 自転車
- 病院
- 防災
- 交通ルール
10.「何かあったら相談してください」だけでは不十分
企業がよく言う言葉に、
「何かあったらいつでも相談してください。」
があります。
もちろん大切な言葉ですが、これだけでは外国人材が相談できない場合があります。
なぜなら、
- 日本語で説明する自信がない
- 忙しい上司に話しかけにくい
- 迷惑をかけたくない
- 怒られるのが怖い
- 誰に相談すればいいか分からない
というケースがあるからです。
そこで、
「仕事の問題は○○さん」
「生活の問題は登録支援機関の○○さん」
「緊急時は○○へ」
というように、相談先を具体的に伝えましょう。

11.登録支援機関の連絡先を本人に伝える
登録支援機関へ支援を委託している場合は、外国人本人がいつでも相談先を確認できるようにしておくことが重要です。
例えば、
仕事の相談
→ まず会社の担当者
生活の相談
→ 登録支援機関
緊急時
→ 会社・登録支援機関が指定する緊急連絡先
というように整理できます。
また、相談対応については、外国人本人が十分に理解できる言語で対応できる体制を整えることが重要です。

12.入社初日に全部終わらせる必要はない
入社初日は情報量が多くなります。
一度にすべて説明しても、本人が覚えられないことがあります。
そのため、
入社前
雇用条件・生活準備・必要な手続きを確認
↓
入社初日
会社・仕事・安全・勤務ルール・相談先を説明
↓
入社1週間後
仕事や生活で困っていることを確認
↓
入社1か月後
職場への適応状況を確認
↓
3か月ごと
定期的に面談して問題を早期発見
という流れを作ると、より効果的です。
特定技能1号の定期面談については、本人およびその監督をする立場の者に対して、それぞれ少なくとも3か月に1回実施することが求められています。
13.入社1週間後に確認したい10項目
入社初日の説明だけで終わらせず、1週間程度経った時点で確認しましょう。
確認質問
- 仕事内容は理解できていますか?
- 日本人スタッフの指示は理解できますか?
- 分からないことを質問できますか?
- 勤務時間・休憩・休日は理解していますか?
- 給料について分からないことはありませんか?
- 通勤に問題はありませんか?
- 住居で困っていることはありませんか?
- 職場の人間関係で困っていませんか?
- 生活面で困っていることはありませんか?
- 会社や登録支援機関に相談したいことはありませんか?
小さな問題の段階で確認することが、早期離職の防止につながります。
14.企業と登録支援機関の役割を明確にする
特定技能外国人の受入れでは、
「企業がやること」と「登録支援機関がやること」
を明確にしておくことが重要です。
企業が中心となって対応すること
- 雇用契約
- 労働条件
- 仕事内容
- 勤怠管理
- 給与
- 安全教育
- 職場ルール
- 作業指示
- 職場環境
- 仕事上の問題
登録支援機関が対応する主な支援
- 事前ガイダンス
- 生活オリエンテーション
- 住居に関する支援
- 銀行・携帯電話等の契約支援
- 行政手続きに関する情報提供・支援
- 日本語学習に関する情報提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 定期面談
- 必要に応じた転職支援
ただし、実際の委託範囲については、支援委託契約書や支援計画の内容を確認する必要があります。

15.企業が保存・確認しておきたい記録
特定技能外国人の支援では、実際にどのような支援を行ったのかを適切に管理することも重要です。
例えば、
- 1号特定技能外国人支援計画
- 支援委託契約関係書類
- 生活オリエンテーションの確認記録
- 定期面談の記録
- 相談・苦情対応記録
- 支援実施記録
- 雇用契約関係書類
などを確認しておきましょう。
2026年4月1日以降の定期届出では新しい様式が使用されているため、最新の様式・制度については出入国在留管理庁の情報を確認することが重要です。
16.特定技能外国人の入社初日チェックリスト
【会社・職場】
□ 会社を紹介した
□ 勤務場所を案内した
□ 更衣室を案内した
□ トイレを案内した
□ 休憩室を案内した
□ 食堂を案内した
□ 駐車場・駐輪場を案内した
□ 避難場所を案内した
□ 上司・担当者を紹介した
【勤務】
□ 始業時間を説明した
□ 終業時間を説明した
□ 休憩時間を説明した
□ 休日・シフトを説明した
□ 残業について説明した
□ 有給休暇について説明した
□ 遅刻・欠勤時の連絡方法を説明した
【仕事内容】
□ 担当業務を説明した
□ 1日の仕事の流れを説明した
□ 作業手順を説明した
□ 使用する道具・機械を説明した
□ 禁止事項を説明した
□ 分からない場合の確認方法を説明した
【安全】
□ 危険箇所を説明した
□ 保護具を説明した
□ 機械の安全ルールを説明した
□ 事故・ケガの報告方法を説明した
□ 緊急時の対応を説明した
【給与】
□ 基本給を説明した
□ 給料日を説明した
□ 残業代を説明した
□ 各種手当を説明した
□ 社会保険・税金等を説明した
□ 給与からの控除を説明した
□ 給与明細の見方を説明した
【生活】
□ 住居を確認した
□ 家賃・生活費を確認した
□ 電気・ガス・水道を確認した
□ 銀行口座を確認した
□ 携帯電話を確認した
□ 通勤方法を確認した
□ ゴミ出しルールを説明した
□ 病院・医療機関について説明した
□ 市役所等の手続きについて確認した
□ 防災・緊急時の対応を説明した
【相談】
□ 会社の相談担当者を伝えた
□ 登録支援機関の連絡先を伝えた
□ 緊急連絡先を伝えた
□ 相談方法を説明した
17.入社初日の説明で避けたい5つの失敗
① 日本語だけで長時間説明する
難しい日本語を大量に使うと、理解できない可能性があります。
簡単な日本語・写真・図・動画・実演などを活用しましょう。
② 「分かりましたか?」だけで終わる
本人が「はい」と答えても、理解しているとは限りません。
本人に説明してもらうことで理解度を確認しましょう。
③ 給与の手取りだけを伝える
基本給・控除・手当などを説明しないと、後から「聞いていた給料と違う」という誤解が生じる可能性があります。
④ 相談先を伝えない
問題が起きても相談できなければ、問題が大きくなってしまいます。
⑤ 入社初日だけ対応する
外国人材の定着には、入社後の継続的なフォローが重要です。
18.外国人材の定着は「入社初日」から始まる
外国人材の採用では、
採用できたことがゴールではありません。
重要なのは、
採用 → 入社準備 → 入社 → 仕事の習得 → 生活支援 → 定期フォロー → 定着・育成
という流れを作ることです。
特に入社後の早い段階で、
- 仕事が分からない
- 日本語が分からない
- 給料が分からない
- 人間関係がうまくいかない
- 生活に困っている
- 相談できない
といった問題を放置すると、不満が大きくなる可能性があります。
企業と登録支援機関が連携し、問題が小さいうちに確認・対応することが大切です。

まとめ|「採用」から「定着」までサポートすることが重要
特定技能外国人の受入れでは、在留資格を取得して入社してもらうだけで終わりではありません。
入社初日には、
① 職場を案内する
② 勤務時間・休日を説明する
③ 仕事内容を具体的に説明する
④ 安全教育を行う
⑤ 給与・控除を説明する
⑥ 会社のルールを説明する
⑦ 日本での生活について確認する
⑧ 相談先を伝える
ことが重要です。
そして、入社後も1週間、1か月、3か月などのタイミングで状況を確認し、問題があれば早めに対応します。
特定技能外国人が安心して働き続けられる環境を作るためには、企業だけで抱え込むのではなく、登録支援機関と役割を明確にして連携することも重要です。
「採用する」だけではなく、
「安心して働ける環境を作る」
ことが、外国人材の定着につながります。



