外国人社員を採用した企業から、
「何度説明しても仕事を覚えてくれない」
「同じミスを繰り返してしまう」
「指示したことがうまく伝わらない」
「日本人社員と比べて仕事を覚えるのが遅い気がする」
といった相談を受けることがあります。
外国人社員を採用した後、仕事を教えることは企業にとって重要な課題の一つです。
しかし、「仕事を覚えない=本人に能力がない」と考える前に、一度確認しておきたいことがあります。
それは、**「会社側の教え方が外国人社員にとって分かりやすいものになっているか」**ということです。
日本人社員には当たり前に伝わる指示でも、日本語を母語としない外国人社員にとっては、意味が曖昧だったり、具体的な行動が分からなかったりする場合があります。
例えば、
「いつものようにやってください」
「適当に片付けてください」
「きれいにしておいてください」
「前に説明しましたよね」
「周りを見て覚えてください」
といった表現は、日本人同士では通じても、外国人社員には具体的な行動が分かりにくいことがあります。
外国人社員に長く安心して働いてもらうためには、「覚えられない」と考える前に、「伝わる教え方になっているか」を見直すことが大切です。
この記事では、外国人社員が仕事を覚えやすくなるために、企業が見直したい5つのポイントを詳しく解説します。
そもそも「仕事を覚えない」のはなぜ?
外国人社員が仕事を覚えられないように見える場合、原因は一つとは限りません。
「仕事を覚えない」という結果だけを見るのではなく、どの段階でつまずいているのかを確認することが重要です。
例えば、次のような可能性があります。
- 日本語の指示を十分に理解できていない
- 業務の優先順位が分からない
- 作業の完成基準が分からない
- 一度に多くの指示を受けている
- マニュアルが日本人向けになっている
- 質問することに遠慮している
- 「分かりました」と言ったが、本当は理解できていない
- 教える担当者によって説明方法が違う
- 日本の職場特有のルールを理解できていない
- 作業そのものの経験が不足している
- 「なぜその作業をするのか」が理解できていない
- ミスをすると怒られると思い、質問できない
そのため、ミスが発生したときには、本人を注意するだけではなく、**「どこで理解が止まっているのか」**を確認することが重要です。
「理解できない」と「できない」は違う
例えば、外国人社員が商品の整理方法を間違えた場合、
「仕事ができない」
と判断する前に、
「商品の並べ方を理解していないのか?」
「日本語の指示を理解できなかったのか?」
「完成状態を見たことがないのか?」
「優先順位を理解していないのか?」
「一度に複数の指示を受けたのか?」
を確認します。
原因が違えば、必要な対応も変わります。
仕事を教える前に確認したい「5つのポイント」
外国人社員が仕事を覚えられない場合、まず次の5項目を確認してみましょう。
| 確認項目 | 確認すること |
| 日本語 | 指示内容を理解できているか |
| 業務内容 | 何をすればよいか分かっているか |
| 手順 | 作業の順番を理解しているか |
| 完成基準 | どこまでやれば完了なのか分かっているか |
| 環境 | 質問・相談しやすい環境になっているか |
この5つを確認するだけでも、問題の原因を整理しやすくなります。
1.「見て覚えて」ではなく、具体的に説明する
日本の職場では、
「前と同じようにやってください」
「これくらい分かりますよね」
「見て覚えてください」
という教え方が使われることがあります。
しかし、日本語を母語としない外国人社員にとって、このような曖昧な指示は理解しにくい場合があります。
NG例
「この部屋をきれいにしてください。」
これだけでは、
- 掃除機をかけるのか
- ゴミを捨てるのか
- テーブルを拭くのか
- 窓を掃除するのか
- どこまで掃除すれば完了なのか
が分からない可能性があります。
改善例
「まずゴミ箱のゴミを集めてください。その後、掃除機をかけて、最後にテーブルを拭いてください。終わったら私に声をかけてください。」
このように、
「何をするか」→「順番」→「完了条件」
まで伝えると、具体的な行動につながりやすくなります。
外国人社員への指示で意識したい4つ
- 具体的な言葉を使う
- 作業の順番を伝える
- 完了の基準を伝える
- 必要に応じて実際に見せる
「分かりやすく話す」だけではなく、**「相手が実際に行動できる説明になっているか」**を意識しましょう。

2.一度にたくさんのことを伝えない
仕事を早く覚えてもらおうとして、一度にたくさんの情報を説明していませんか?
外国人社員の場合、日本語の内容を理解しながら仕事そのものも覚える必要があります。
そのため、長い説明を一度に受けると、重要な部分を聞き逃してしまうことがあります。
例えば、
「まず倉庫から商品を持ってきて、その後この書類を確認して、終わったら〇〇さんに報告して、そのあと別の作業をして……」
と長く説明するよりも、
① 商品を持ってくる
↓
② 書類を確認する
↓
③ 担当者に報告する
というように、作業を分けて説明した方が確認しやすくなります。
「一つずつ教える」ことも重要
特に入社したばかりの外国人社員には、
説明 → 実践 → 確認 → 次の仕事
という流れを意識するとよいでしょう。
最初からすべてを完璧に覚えてもらうのではなく、基本的な作業から少しずつ習得してもらいます。
3.口頭説明だけでなく「見える化」する
外国人社員への仕事の説明では、言葉だけに頼らないことも重要です。
写真、動画、イラスト、チェックリスト、作業マニュアルなどを活用することで、仕事内容を具体的に理解しやすくできます。
例えば、清掃業務なら、
清掃手順
① ゴミを集める
↓
② 床を掃除する
↓
③ テーブルを拭く
↓
④ ゴミを指定場所へ捨てる
↓
⑤ 最後にチェックする
というように、作業手順を見える形にします。
さらに、実際の写真を使って、
「この状態になれば完了」
という基準を示すと、より分かりやすくなります。
写真付きマニュアルを作るときのポイント
- 実際の職場の写真を使う
- 1ページに情報を詰め込みすぎない
- 重要な部分を大きく表示する
- 難しい日本語をできるだけ避ける
- 必要に応じて外国人社員が理解できる言語も活用する
- 「良い例」と「悪い例」を並べて見せる
- 作業完了の状態を写真で示す
特に、介護・製造・農業・外食・宿泊・運送など、作業手順が決まっている仕事では、**「見て分かるマニュアル」**が役立ちます。

4.「分かりましたか?」だけで終わらせない
仕事を説明した後、
「分かりましたか?」
と聞いて、
「はい、分かりました」
と返事があれば、理解できたと判断していないでしょうか?
実際には、「分かりました」と答えていても、十分に理解できていない場合があります。
例えば、
- 日本語で「分からない」と言いにくい
- 上司に何度も聞くことを遠慮している
- 間違っていても「はい」と答えてしまう
- 自分では理解したつもりになっている
といったことが考えられます。
そこで、説明後に実際の理解度を確認しましょう。
例えば、
「では、今説明した作業をやってみてください。」
「最初に何をしますか?」
「終わったら次は何をしますか?」
「どこが一番分かりにくかったですか?」
などと確認します。
特に、**本人に作業手順を説明してもらう「復唱確認」**は、理解度を確認する方法の一つです。


5.ミスを責めるだけではなく、原因を確認する
同じミスが続くと、
「何回言えば分かるの?」
「ちゃんと覚えてください」
「前にも説明しましたよね」
と言いたくなることもあります。
しかし、それだけでは問題が解決しない場合があります。
同じミスが続くときは、
「なぜできないのか」ではなく、「なぜ伝わらなかったのか」
という視点でも確認してみましょう。
ケース1:指示が曖昧だった
「早めにお願いします。」
↓
外国人社員:
「今日中でいいのか」「30分以内なのか」が分からない。
改善
「11時までにお願いします。」
と具体的な時間を伝える。
ケース2:優先順位が分からない
複数の仕事を頼まれたが、どれから始めればよいのか分からない。
改善
「まずAをしてください。終わったらB、その後Cです。」
と順番を伝える。
ケース3:完成基準が分からない
「きれいにしてください」と言われたが、どこまでやればよいのか分からない。
改善
写真や具体例を使って、
「この状態になれば完了です。」
と伝える。

外国人社員への「NGな教え方」と「改善方法」
| NGな教え方 | 問題点 | 改善方法 |
| 「見て覚えて」 | 何を覚えるのか分からない | 手順を具体的に説明する |
| 「ちゃんとやって」 | 「ちゃんと」の基準が曖昧 | 完成状態を説明する |
| 「早めにやって」 | 時間が分からない | 「○時まで」と伝える |
| 一度に大量の指示 | 情報を整理しにくい | 一つずつ伝える |
| 「分かった?」だけ | 本当に理解したか分からない | 実際にやってもらう |
| ミスだけを注意する | 原因が解決しない | 原因を一緒に確認する |
| 長い日本語マニュアル | 内容を理解しにくい場合がある | 写真・図・簡単な表現を使う |
外国人社員が質問しやすい環境を作る
仕事を覚えるためには、外国人社員が「分からない」と言える環境も重要です。
「分からないことがあったら聞いてください」
と言うだけではなく、
「分からないことは、いつでも聞いて大丈夫です。」
「同じことを何回聞いても大丈夫です。」
「分からない場合は、作業を始める前に確認してください。」
など、質問してよいことを具体的に伝える方法があります。
また、外国人社員が質問しやすい担当者を決めておくことも一つの方法です。
「質問しやすい職場」にするための工夫
- 教育担当者を一人決める
- 毎日の簡単な確認時間を作る
- 質問方法を明確にする
- 分からないことをメモできる場所を作る
- 定期的に面談する
- ミスを報告しても責めるだけにしない
外国人社員が安心して質問できる環境は、仕事を覚えるためだけでなく、職場でのトラブルを早期に発見するためにも役立ちます。
日本語能力だけを原因にしないことも大切
外国人社員が仕事を覚えられないとき、
「日本語がまだ上手ではないから」
と考えてしまうことがあります。
もちろん、業務上必要な日本語を理解することは重要です。
しかし、仕事の説明が分かりにくい場合、単純に日本語能力だけの問題とは限りません。
例えば、
「これをお願いします」
という指示よりも、
「この書類の名前と住所を確認してください。間違いがなければ、右下にある欄へ記入してください。」
というように具体的に説明した方が、相手が行動しやすくなります。
つまり、「簡単な日本語にする」だけではなく、「具体的な指示にする」ことが重要です。

「やさしい日本語」を仕事の指示にも活用する
外国人社員への説明では、難しい言葉や長い文章を避け、短く具体的な表現を使うことも有効です。
例えば、
分かりにくい表現
「作業終了後は所定の場所に移動して、担当者へ報告をお願いいたします。」
より分かりやすい表現
「仕事が終わったら、○○へ行ってください。その後、○○さんに報告してください。」
ただし、「やさしい日本語」は単に日本語を幼くすることではありません。
必要な情報を省略せず、短く、具体的に伝えることがポイントです。
「仕事の目的」も説明する
外国人社員に作業手順だけを伝えるのではなく、
「なぜ、この仕事をするのか」
を説明することも大切です。
例えば、
「このチェックをしてください。」
だけではなく、
「間違いがあるとお客様に商品を届けられないので、出荷する前に必ず確認してください。」
と説明します。
仕事の目的が分かると、単に作業を暗記するだけではなく、注意すべきポイントを理解しやすくなります。
OJTでは「やって見せる→一緒にやる→一人でやる」
外国人社員への仕事の教育では、口頭説明だけで終わらせず、実際の作業を通して教えることが重要です。
おすすめの流れは、
STEP 1:教える人がやって見せる
「まず、このようにします。」
STEP 2:一緒にやる
「次は一緒にやってみましょう。」
STEP 3:本人がやってみる
「今度は一人でやってみてください。」
STEP 4:確認する
「どこが難しかったですか?」
STEP 5:必要ならもう一度説明する
という流れです。
一度説明しただけで終わらせず、**「説明→実践→確認」**を繰り返すことがポイントです。
入社後の1週間・1か月で確認するポイント
外国人社員が入社した直後は、特に多くのことを覚える必要があります。
そのため、入社後の期間に応じて確認する内容を整理しておくとよいでしょう。
入社直後
- 職場のルールを理解しているか
- 担当業務を理解しているか
- 誰に質問すればよいか分かっているか
- 安全ルールを理解しているか
1週間程度
- 基本作業を一人でできるか
- 指示を理解できているか
- 困っていることがないか
- 同じミスが繰り返されていないか
1か月程度
- 担当業務に慣れてきたか
- 日本人社員とのコミュニケーションに問題がないか
- 追加で必要な教育がないか
- 仕事や生活で困っていることがないか
こうした確認を定期的に行うことで、問題を早期に発見しやすくなります。
外国人社員の定着には「入社後のフォロー」が重要
外国人材の採用では、採用・入国・入社だけをゴールにするのではなく、入社後のフォローも重要です。
仕事に慣れてきたか、職場で困っていないか、生活面で問題がないかなどを定期的に確認することで、問題が大きくなる前に対応できる場合があります。
特に、
- 仕事の内容が分からない
- 上司に相談しにくい
- 日本人社員とのコミュニケーションに困っている
- 生活面で問題がある
- 日本語の理解に不安がある
- 職場で孤立している
といった問題がないか確認することが大切です。
「最近、仕事はどうですか?」
だけではなく、
「仕事で分からないことはありますか?」
「職場で困っていることはありますか?」
「上司や同僚に質問できますか?」
「生活面で困っていることはありませんか?」
など、具体的に聞くことで相談しやすくなる場合があります。
企業側にも「外国人材を受け入れる準備」が必要
外国人材を採用する場合、外国人社員だけに日本の職場へ適応してもらうのではなく、企業側も受け入れ体制を整えることが重要です。
採用前
- 担当者を決める
- 業務内容を明確にする
- 必要な日本語レベルを確認する
- 教育担当者を決める
- マニュアルを準備する
入社時
- 仕事内容を具体的に説明する
- 職場のルールを説明する
- 安全ルールを確認する
- 緊急時の連絡方法を伝える
- 質問・相談先を伝える
入社後
- 定期的に面談する
- 仕事の理解度を確認する
- 困りごとを聞く
- 必要に応じてマニュアルを改善する
- 職場とのコミュニケーション状況を確認する
このように、採用前から入社後まで一貫した受け入れ体制を作ることが大切です。
外国人社員への仕事の教え方チェックリスト
企業の担当者は、次の項目をチェックしてみてください。
指示について
□ 指示は具体的になっている
□ 作業の順番を説明している
□ 期限や時間を明確にしている
□ 完了条件を伝えている
□ 曖昧な表現をできるだけ避けている
教育について
□ 一度に多くのことを説明していない
□ 実際の作業を見せている
□ 写真や動画を活用している
□ チェックリストを用意している
□ 実際に作業してもらい理解を確認している
コミュニケーションについて
□ 外国人社員が質問しやすい環境を作っている
□ 「分からない」と言いやすい雰囲気がある
□ 定期的に困りごとを確認している
□ ミスの原因を一緒に確認している
□ 日本語能力だけを原因にしていない
それでも仕事を覚えられない場合は?
ここまで教え方を見直しても問題が続く場合は、さらに原因を細かく確認する必要があります。
例えば、
① 業務内容そのものが本人に合っているか
↓
② 必要な日本語を理解できているか
↓
③ 教育方法に問題がないか
↓
④ 職場の人間関係に問題がないか
↓
⑤ 生活面で仕事に影響する問題がないか
という順番で確認していく方法があります。
仕事のミスだけを見るのではなく、仕事・日本語・生活・コミュニケーションを分けて考えることが重要です。
また、一人の担当者だけで判断せず、本人・教育担当者・管理者など複数の立場から状況を確認することも有効です。
まとめ|「できない」ではなく「どう伝えるか」を考える
外国人社員が仕事を覚えられない場合、すぐに本人の能力や日本語力を原因と考えるのではなく、まず会社側の伝え方を見直してみましょう。
特に重要なのは、次の5つです。
① 「見て覚えて」ではなく、具体的に説明する
② 一度にたくさんのことを伝えない
③ 写真・動画・チェックリストなどで見える化する
④ 「分かりましたか?」だけでなく、実際の作業で理解を確認する
⑤ ミスを責めるだけではなく、原因を一緒に確認する
さらに、
- やさしい日本語を活用する
- 仕事の目的を説明する
- OJTで実際に作業してもらう
- 定期的に面談する
- 質問しやすい環境を作る
- 企業側の受け入れ体制を整える
といった取り組みも重要です。
外国人材の受け入れでは、外国人社員本人の努力だけでなく、企業側の教育方法やコミュニケーションの工夫も重要です。
「仕事を覚えない」のではなく、「仕事の伝わり方を見直す」。
この視点を持つことで、外国人社員が仕事を理解しやすくなり、職場でのコミュニケーションや定着にもつながる可能性があります。
登録支援機関として外国人材の受け入れをサポート
外国人材の採用は、採用して終わりではありません。
入社後に安心して仕事を続けてもらうためには、仕事だけでなく、生活面や職場でのコミュニケーションについても継続的に確認することが重要です。
登録支援機関では、特定技能外国人に対する支援を行う中で、入社後の生活・相談対応など、外国人材が日本で安心して働くための支援を行います。
企業側にとっても、外国人社員が職場で困っていることを把握し、必要な対応につなげることは重要です。
このような企業様はご相談ください
「外国人社員への仕事の教え方が分からない」
「外国人社員とのコミュニケーションに不安がある」
「入社後のフォローについて相談したい」
「外国人材の定着について相談したい」
「特定技能外国人の受け入れについて知りたい」
このような場合は、登録支援機関への相談をご検討ください。
外国人材の採用・受け入れ・定着について、企業と外国人社員の双方が安心して働ける環境づくりをサポートします。
外国人材の採用や特定技能外国人の受け入れについてお困りの企業様は、お気軽にご相談ください。



