人手不足を背景に、外国人材を採用する企業が増えています。
特定技能、技術・人文知識・国際業務など、外国人材を受け入れるための在留資格もあり、さまざまな業種で外国人社員が活躍しています。
一方で、外国人材の採用について、
「外国人なら日本人より安く雇えるのでは?」
「人手不足なので、とにかく低コストで人を確保したい」
「日本語がまだ上手ではないから、日本人より給与が低くても仕方ない」
と考えてしまう企業もあるかもしれません。
しかし、外国人材を「安い労働力」として考えることは、企業にとっても外国人本人にとっても、長期的なメリットにつながりません。
外国人材も、日本人社員と同じように、一人の労働者です。
仕事だけでなく、日本で生活し、将来のキャリアを考え、家族や自分の生活を支えています。
そのため、外国人材を採用する際には、
「安く雇える人」ではなく、「一緒に働き、成長していく人材」
として考えることが重要です。
この記事では、外国人材を「安い労働力」と考えてはいけない理由、企業が注意すべきポイント、採用後の教育・生活支援、長期的な定着につなげる方法について詳しく解説します。

外国人材は「安く雇える人」ではありません
まず理解しておきたいのは、
「外国人だから人件費を安くできる」という考え方は適切ではない
ということです。
外国人であっても、日本で働く労働者として、適用される労働関係法令などに基づき、適切な労働条件のもとで雇用する必要があります。
特定技能外国人についても、外国人であることを理由として不当に低い待遇にするのではなく、仕事内容や責任などに応じた適切な労働条件を設定することが重要です。
例えば、
- 基本給
- 各種手当
- 勤務時間
- 休憩時間
- 休日
- 有給休暇
- 時間外労働
- 社会保険
- 福利厚生
- 仕事内容
などについて、採用前に明確にしておくことが大切です。
「外国人だから安い給与でいい」という考え方ではなく、仕事内容や能力、経験、責任などに見合った適切な待遇で雇用することが基本です。
「外国人だから給与が安くていい」は危険
例えば、日本人社員と外国人社員が同じような仕事を担当しているにもかかわらず、
「外国人だから給与を低くする」
という考え方をすると、外国人社員から不信感を持たれる可能性があります。
また、採用時に説明された給与や仕事内容と、実際の条件が違っていれば、トラブルにつながる可能性もあります。
外国人材を採用するときに重要なのは、
「日本人より安く雇えるか」
ではありません。
重要なのは、
「仕事内容や責任に対して適切な労働条件になっているか」
ということです。
採用時に労働条件を分かりやすく説明し、本人が内容を理解したうえで働き始められる環境をつくることが重要です。

外国人材を「安い労働力」と考えてはいけない10の理由
外国人材を単なる低コストの労働力として考えることが望ましくない理由は、いくつもあります。
1.外国人材も一人の「働く人」だから
外国人材は、単に企業の人手不足を埋めるための存在ではありません。
日本人社員と同じように、
- 仕事を覚える
- 責任を持って働く
- 生活費を支払う
- 家族を支える
- 将来のキャリアを考える
- 日本語を勉強する
- 新しい技能を身につける
など、仕事と生活の両方があります。
企業が外国人材を一人の社員として尊重することが、信頼関係を築く第一歩です。
「外国人だから」という理由だけで待遇や仕事を一方的に決めるのではなく、本人の能力や経験、希望なども考慮することが重要です。
2.「安さ」を優先すると定着しにくくなる可能性がある
外国人材が会社を辞める理由は、給与だけではありません。
しかし、
- 聞いていた給与と違う
- 契約時と仕事内容が違う
- 残業が多い
- 休日が少ない
- 相談できる人がいない
- 職場で孤立している
- 日本人社員との扱いが違う
- 将来のキャリアが見えない
などの問題が重なると、会社に対する不満が大きくなる可能性があります。
企業としては、
「安く採用すること」より「長く働いてもらうこと」
を考えることが重要です。
3.外国人材の採用にもさまざまなコストがかかる
外国人材を採用するとき、「給与が安いかどうか」だけで採用コストを判断することはできません。
採用から入社までには、さまざまな費用や担当者の時間が必要になる場合があります。
例えば、
- 求人費用
- 人材紹介費用
- 面接費用
- 通訳費用
- 在留資格関連の手続き
- 渡航費
- 空港送迎
- 住居準備
- 家具・家電などの生活準備
- 日本語教育
- 業務教育
- 入社後の生活支援
- 定期面談
- 通訳・相談対応
などです。
特に海外から外国人材を採用する場合、国内採用とは異なる準備が必要になることがあります。
そのため、給与だけを見て「外国人材は安い」と判断するのは適切ではありません。

4.採用後の「教育コスト」も考える必要がある
外国人材を採用した場合、入社したその日からすべての仕事を完璧にできるとは限りません。
企業によっては、
- 日本語
- 業務用語
- 作業手順
- 安全ルール
- 社内ルール
- 接客方法
- 報告・連絡・相談
- パソコン操作
- 専門的な知識
などを教える必要があります。
しかし、教育が必要なのは外国人材だけではありません。
日本人の新入社員であっても、入社後には仕事を覚えるための教育が必要です。
そのため、
「教育が必要だから外国人はコストが高い」
と考えるのではなく、
「教育によって将来の戦力に育てる」
という考え方が重要です。
5.外国人材は「育成する人材」として考える
外国人材を採用するときは、入社直後の能力だけで判断するのではなく、半年後、1年後、3年後の成長も考えることが重要です。
例えば、
入社直後
基本的な仕事内容と職場ルールを覚える
↓
3~6か月後
一人で担当できる仕事を増やす
↓
1年後
より専門的な業務を担当する
↓
2~3年後
後輩社員のサポートや責任のある仕事を担当する
というような成長を目指すことができます。
企業が教育とキャリア形成を支援することで、外国人材が長期的に会社を支える人材になる可能性があります。
6.外国人材は「生活者」でもある
外国人材は、勤務時間以外も日本で生活しています。
特に日本に来たばかりの外国人の場合、
- 住居
- 市区町村の手続き
- 銀行
- 携帯電話
- 電気
- ガス
- 水道
- 病院
- 交通ルール
- ごみ出し
- 防災
などについて分からないことがあります。
日本人にとっては簡単な手続きでも、日本に初めて住む外国人にとっては難しい場合があります。
生活上の問題が大きなストレスになれば、仕事にも影響する可能性があります。
そのため、必要に応じて生活面の相談や支援が受けられる体制を整えることが重要です。
7.「相談できる環境」が定着につながる
外国人社員が困ったとき、
「誰に相談すればいいのか分からない」
という状態は避けたいところです。
例えば、
- 仕事の相談
- 給与や勤務時間についての相談
- 人間関係の相談
- 生活上の相談
- 病院に関する相談
- 在留資格に関する相談
など、内容に応じた相談先を明確にしておくことが重要です。
外国人社員が日本語で相談することに不安を感じる場合には、母語対応や通訳などの方法も検討できます。
8.ハラスメントや差別への対策も必要
外国人社員を採用する企業では、ハラスメントや差別についても注意する必要があります。
例えば、
「外国人だから分からないだろう」
「日本語が下手だから重要な仕事を任せない」
「外国人だから簡単な仕事だけでいい」
「外国人だから休暇を取りにくくしてもいい」
といった考え方は、職場の信頼関係を壊す原因になる可能性があります。
外国人社員も、安心して働ける職場環境を必要としています。
また、日本人社員にも外国人材との働き方について説明し、職場内の誤解を減らすことが重要です。
9.外国人材は企業の「戦力」になり得る
外国人材を採用するメリットは、人手不足を補うことだけではありません。
外国人材が持っている、
- 母語
- 多言語能力
- 海外の文化や知識
- 海外とのネットワーク
- 異なる視点
- 専門的な経験
などを企業活動に活かせる場合があります。
例えば、
外国人顧客への対応、
海外との取引、
外国人社員の教育、
多言語での情報発信
などで活躍できる可能性があります。
そのため、
「人手不足だから外国人を採用する」
だけではなく、
「外国人材の能力を企業の成長に活かす」
という発想も重要です。
10.「安い人材」ではなく「長く働く人材」を採用する
企業にとって重要なのは、採用時のコストだけではありません。
重要なのは、
採用 → 定着 → 育成 → 活躍
という流れをつくることです。
一人の外国人材が長く働き、仕事を覚え、専門性を高め、後輩を教育できるようになれば、企業にとって大きな財産になります。
反対に、低コストだけを重視して採用し、短期間で退職してしまえば、
再募集 → 面接 → 採用 → 手続き → 教育
を繰り返すことになります。
結果として、企業の負担が大きくなる可能性があります。

特定技能外国人の場合は「支援」も重要
特定技能1号外国人を受け入れる場合、受入れ機関には一定の支援が求められます。
代表的な支援には、
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約に関する支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続きへの同行・必要な支援
- 日本語学習に関する支援
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進に関する支援
- 転職支援
- 定期的な面談
などがあります。
企業が必要な支援を適切に行うことができる場合は、自社で支援を行うこともできます。
自社だけで対応することが難しい場合には、登録支援機関への委託を検討できます。

登録支援機関を利用する場合も企業の役割は残る
登録支援機関に支援を委託した場合でも、
「登録支援機関に全部任せれば、企業は何もしなくていい」
という意味ではありません。
企業自身も、
- 適切な労働条件の管理
- 職場環境の整備
- 業務教育
- 安全管理
- ハラスメント対策
- 日本人社員とのコミュニケーション
- 外国人社員との信頼関係づくり
などを行うことが重要です。
登録支援機関と企業がそれぞれの役割を理解し、協力することが大切です。
外国人材を採用する前に企業が確認したい10項目
外国人材を採用する前に、次の項目を確認しておきましょう。
① 仕事内容
実際に担当してもらう仕事内容を明確にします。
② 給与・待遇
給与、手当、控除、福利厚生などを分かりやすく説明します。
③ 勤務時間
勤務時間、休憩、休日、残業などを確認します。
④ 在留資格
採用する仕事が、その外国人の在留資格で認められている仕事内容なのか確認します。
⑤ 日本語レベル
仕事を安全に行うために必要な日本語レベルを確認します。
⑥ 教育担当者
入社後、誰が仕事を教えるのか決めておきます。
⑦ 生活支援
住居、市区町村の手続き、病院などについて、必要な支援を確認します。
⑧ 相談窓口
仕事や生活で問題が発生した場合の相談先を決めておきます。
⑨ 緊急時対応
病気、事故、トラブルなどが発生した場合の連絡体制を準備します。
⑩ キャリア
外国人材が将来的にどのような仕事を担当できるのか、キャリアについて考えます。

外国人材の定着率を高めるために企業ができること
外国人材に長く働いてもらうためには、特別な制度だけが必要なわけではありません。
日常的なコミュニケーションも非常に重要です。
「分からない」と言いやすい職場をつくる
日本語が分からないことを理由に怒られるような環境では、外国人社員は質問しにくくなります。
「分からないときは聞いてください」
という雰囲気をつくることが重要です。
仕事のルールを見える化する
口頭だけで説明するのではなく、
- 写真
- 図
- 動画
- やさしい日本語
- 多言語資料
などを活用すると、理解しやすくなります。
定期的に話す
問題が発生してから話すのではなく、定期的に本人と話すことが重要です。
「仕事で困っていることはありませんか?」
「生活で困っていることはありませんか?」
など、企業側から確認することも大切です。
日本人社員にも説明する
外国人社員だけに努力を求めるのではなく、日本人社員にも外国人材とのコミュニケーションについて理解してもらいます。
成長を評価する
日本語能力や仕事のスキルが向上した場合には、その成長を適切に評価することも重要です。

「安く採用する」より「長く働いてもらう」
企業が外国人材の採用を考えるとき、
「一番安い人材を探す」
という考え方ではなく、
「長く働き、成長してくれる人材を採用する」
という考え方が重要です。
例えば、採用後に教育コストがかかったとしても、長期間働いてもらうことができれば、その経験やスキルが企業の財産になる可能性があります。
一方、低コストだけを重視して採用し、短期間で退職してしまえば、
再募集 → 面接 → 採用 → 手続き → 教育
を繰り返す必要があります。
その結果、採用担当者の時間や教育コストも増えてしまいます。
外国人材を「コスト」ではなく「投資」と考える
外国人材への教育や支援にはコストがかかります。
しかし、それを単なる「費用」と考えるだけではなく、将来の人材への投資として考えることもできます。
例えば、
日本語教育
↓
コミュニケーション能力の向上
↓
業務教育
↓
仕事の質・生産性の向上
↓
長期的な定着
↓
後輩社員の教育
↓
企業の戦力になる
という好循環をつくることができます。
外国人材の採用で避けたい5つの考え方
NG 1
「外国人だから安くていい」
外国人であることだけを理由に、低い待遇にするという考え方は避けるべきです。
NG 2
「日本語ができないから、詳しく説明しなくてもいい」
重要な労働条件や仕事のルールは、本人が理解できるように説明することが大切です。
NG 3
「仕事だけしてもらえばいい」
外国人材も日本で生活しています。必要に応じて生活面の相談・支援体制を考えることが重要です。
NG 4
「問題が起きたら、そのとき考えればいい」
問題が大きくなる前に、定期的に相談・面談することが重要です。
NG 5
「登録支援機関に全部任せればいい」
登録支援機関に支援を委託した場合でも、企業自身の役割があります。
企業が目指したい外国人材の受け入れ方
外国人材の受け入れは、採用した時点で終わりではありません。
採用前
仕事内容・給与・在留資格・生活について説明
↓
入社時
仕事・安全・社内ルールを教育
↓
入社後
定期的に相談・面談
↓
6か月~1年
仕事のスキルや日本語の成長を確認
↓
1年以降
より専門的・責任のある仕事へ
↓
長期
企業を支える人材へ
このように、長期的な視点で外国人材を育成することが重要です。
外国人材を採用する企業にとって大切な4つの視点
最後に、外国人材を受け入れる企業が意識したいポイントを4つに整理します。
① 公平
外国人だからという理由だけで不当に扱わない。
② 安心
仕事や生活について相談できる環境をつくる。
③ 成長
日本語や仕事のスキルを学べる環境をつくる。
④ 定着
短期的な人手不足対策ではなく、長期的な人材育成を考える。
この4つを意識することで、外国人材が働きやすい職場づくりにつながります。

まとめ|外国人材は「安い労働力」ではなく「企業を支える人材」
外国人材を採用する目的は、単に人件費を抑えることではありません。
外国人材も日本人社員と同じように、一人の働く人です。
そのため企業には、
- 適切な労働条件
- 安心して働ける環境
- 分かりやすい教育
- 相談できる体制
- 必要な生活支援
- ハラスメント対策
- キャリア形成
- 長期的な育成
といった視点が求められます。
特に特定技能1号外国人を受け入れる場合は、制度上必要となる支援についても適切に対応する必要があります。
外国人材を「安い労働力」として考えるのではなく、
「採用する人材」から「育てる人材」へ。
そして、
「人手不足を補う人材」から「企業の将来を支える人材」へ。
このような考え方に変えることが、外国人材の定着と企業の成長につながります。
外国人材の採用を成功させるためには、採用時の条件だけでなく、入社後の教育、職場環境、生活支援、相談体制、キャリア形成まで含めて考えることが大切です。
外国人材を「安い労働力」ではなく、「ともに働き、ともに成長する社員」として受け入れること。
これが、これからの外国人材採用において重要な考え方です。



