外国人材の採用を検討している企業から、よく聞かれる不安があります。
「採用しても、すぐ辞めてしまわないか」
「日本語や生活面で、どこまで会社が対応すればいいのか」
「現場の日本人社員とうまくやっていけるのか」
外国人材の受け入れでは、在留資格の申請や採用手続きに目が向きがちです。しかし、実際に大切なのは「採用した後」です。特に入社してから最初の90日間は、本人が会社に定着するかどうかを左右する非常に重要な期間です。
この記事では、外国人材を受け入れる企業が知っておきたい「入社後90日ルール」について解説します。

入社後90日が重要な理由
外国人材にとって、入社直後は大きな変化の連続です。
新しい職場、新しい上司、新しい生活環境、日本語での指示、職場のルール、寮での生活、通勤、買い物、病院、役所の手続きなど、仕事以外にも覚えることがたくさんあります。
企業側は「仕事を教えれば大丈夫」と考えがちですが、外国人材にとっては、仕事と生活が同時に始まります。仕事の不安、生活の不安、人間関係の不安が重なると、本人は早い段階で「この会社で続けられるだろうか」と考えるようになります。
そのため、入社後90日間は、単なる試用期間ではなく、会社と本人の信頼関係を作る期間と考えることが大切です。
1か月目:まずは「安心して働ける状態」を作る

入社後1か月目に大切なのは、仕事の成果を急がせることではありません。まずは、本人が安心して働ける状態を作ることです。
具体的には、次のような確認が必要です。
・出勤時間、休憩時間、残業の考え方を理解しているか
・給与、控除、手取り額について誤解がないか
・仕事の指示を誰に聞けばよいか分かっているか
・寮や住居で困っていることはないか
・通勤、買い物、病院、役所手続きで不安がないか
・日本人社員との関係で孤立していないか
特に給与については、トラブルになりやすい部分です。求人時に聞いていた金額と、実際の手取り額に差があると、本人が不信感を持つことがあります。社会保険料、税金、寮費、光熱費などの控除がある場合は、早い段階で丁寧に説明しておくことが重要です。
2か月目:仕事の覚え方と人間関係を確認する

2か月目になると、本人も少しずつ仕事に慣れてきます。一方で、この時期には新しい悩みも出てきます。
「何度も聞くと怒られるのではないか」
「日本語が分からないと言いづらい」
「職場の人と距離を感じる」
「自分だけ仕事が遅いと思われていないか不安」
このような不安を放置すると、本人は相談しないまま我慢してしまうことがあります。外国人材の中には、問題が大きくなってから初めて相談する人も少なくありません。
そのため、2か月目には、現場の責任者だけでなく、支援担当者や相談担当者が本人と話す機会を作ることが大切です。
この時期のポイントは、「困ったら相談してね」と言うだけで終わらせないことです。本人が本当に相談できるように、次のような仕組みを作っておくと効果的です。
・相談できる担当者を明確にする
・母国語や分かりやすい日本語で確認する
・仕事の相談と生活の相談を分けて聞く
・小さな不満や不安も否定せずに聞く
・現場の上司にも本人の様子を確認する
外国人材の定着には、本人への支援だけでなく、受け入れる日本人社員側の理解も必要です。

3か月目:この会社で続けたいと思えるかを確認する

入社後3か月が経つと、本人はその会社で働き続けるイメージを持ち始めます。
「この会社で頑張れそうだ」
「上司に相談できる」
「生活にも慣れてきた」
このように感じていれば、定着の可能性は高まります。
一方で、次のような状態が見られる場合は注意が必要です。
・表情が暗くなった
・遅刻や欠勤が増えた
・休日に一人で過ごすことが多い
・給与や寮について不満を話すようになった
・日本人社員との会話が減った
・他社で働いている友人の話をよくするようになった
これらは、退職や転職を考え始める前兆の場合があります。突然辞めたように見えるケースでも、実際にはその前から小さなサインが出ていることがあります。
3か月目には、仕事の習熟度だけでなく、本人の気持ちや生活状況を確認することが重要です。
「90日ルール」で確認したい5つの項目
外国人材の入社後90日間で、企業が特に確認したい項目は次の5つです。
- 労働条件の理解
給与、勤務時間、休日、残業、控除、寮費などについて、本人が正しく理解しているか確認します。特に手取り額については、採用前の説明と入社後の実感に差が出やすいため注意が必要です。
- 仕事の指示の理解
日本語能力がある程度あっても、現場特有の言い回しや専門用語はすぐには理解できません。「分かった?」と聞くと「はい」と答えていても、実際には理解できていない場合があります。言葉だけでなく、実際にやってもらって確認することが大切です。
- 生活面の安定
住居、通勤、買い物、病院、銀行、携帯電話、役所手続きなど、生活が安定していないと仕事にも影響します。特に来日直後や転職直後は、生活支援の重要性が高くなります。
- 職場の人間関係
外国人材が辞める理由は、給与だけではありません。上司との関係、同僚との距離感、注意のされ方、相談しにくい雰囲気なども大きな原因になります。現場任せにせず、会社として受け入れ体制を整えることが必要です。
- 将来の見通し
本人が「この会社で頑張れば成長できる」と感じられるかどうかも重要です。仕事を覚えた後に何を目指せるのか、資格取得や昇給の可能性はあるのか、長く働ける環境なのかを伝えることで、定着につながりやすくなります。

受け入れ企業がやってはいけない対応
外国人材の受け入れで避けたいのは、「日本人と同じように説明したから大丈夫」と考えることです。
もちろん、外国人材だからといって特別扱いをしすぎる必要はありません。しかし、言語、文化、生活環境、制度理解の違いがある以上、日本人社員とまったく同じ説明だけでは不十分なことがあります。
また、次のような対応はトラブルにつながりやすいです。
・最初にまとめて説明しただけで、その後確認しない
・現場の上司にすべて任せてしまう
・本人が「大丈夫」と言ったので問題ないと判断する
・生活面の困りごとを仕事とは関係ないと考える
・日本人社員への説明をしないまま受け入れる
外国人材の定着には、本人への説明だけでなく、会社全体で受け入れる意識が必要です。
登録支援機関との連携も重要
特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受け入れ企業には、職業生活、日常生活、社会生活に関する支援が求められます。登録支援機関に支援を委託している場合でも、現場で毎日接するのは受け入れ企業です。
そのため、企業と登録支援機関が連携し、本人の状況を早めに共有することが重要です。
たとえば、次のようなことがあれば、早めに相談することをおすすめします。
・本人の様子が以前と違う
・仕事のミスが急に増えた
・職場で孤立している
・給与や寮について不満がある
・欠勤や遅刻が出てきた
・転職を考えているような発言がある
問題が大きくなってから対応するよりも、小さな違和感の段階で対応した方が、定着につながりやすくなります。
まとめ:外国人材の定着は「入社後90日」で決まる
外国人材の採用では、入国や在留資格の手続きがゴールのように見えてしまうことがあります。しかし、本当のスタートは入社してからです。
特に入社後90日間は、本人が会社を信頼できるか、仕事に慣れられるか、生活が安定するかを決める大切な期間です。
外国人材を長く雇用するためには、次の3つが重要です。
・入社直後に安心できる環境を作ること
・2か月目に仕事と人間関係の不安を確認すること
・3か月目に今後も働き続けたいと思える状態を作ること
外国人材の受け入れは、採用して終わりではありません。採用後の支援体制を整えることで、本人にとっても企業にとっても、長く安心して働ける関係を作ることができます。
外国人材の受け入れや特定技能外国人の支援体制でお困りの企業様は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。



