外国人社員を採用している企業では、給与や勤務時間、仕事内容だけではなく、職場の人間関係、日本語でのコミュニケーション、生活上の問題、在留手続きなど、さまざまな相談に対応する必要があります。
しかし、外国人社員の中には、
「誰に相談すればいいのか分からない」
「日本語でうまく説明できない」
「こんなことを会社に相談してもいいのか分からない」
「相談したら会社に悪い印象を持たれるのではないか」
と考え、問題を抱えたまま我慢してしまうケースがあります。
問題が小さいうちに相談できれば、企業側も早期に対応できます。
一方で、相談できない状態が続くと、仕事への不満やストレスが大きくなり、最終的には離職や職場トラブルにつながる可能性があります。
そのため、外国人社員を受け入れている企業では、**「困ったときに安心して相談できる社内窓口」**をあらかじめ整えておくことが重要です。
この記事では、外国人社員向けの相談窓口を作る際に必要な考え方から、具体的な運用方法まで詳しく解説します。
1.外国人社員向けの相談窓口とは?
外国人社員向けの相談窓口とは、外国人社員が仕事や生活などで困ったときに、会社へ相談できる担当者や連絡先を明確にした仕組みのことです。
必ずしも専用の部屋や部署を作る必要はありません。
例えば、
- 外国人社員担当者を1名決める
- 人事担当者を相談窓口にする
- 総務担当者を窓口にする
- 専用メールアドレスを作る
- 電話やチャットで相談できるようにする
- 定期面談を実施する
- 必要に応じて登録支援機関へつなぐ
といった方法でも構築できます。
重要なのは、「困ったときに誰に相談すればいいのか」が外国人社員本人に明確に分かっていることです。
2.なぜ相談窓口が必要なのか?
外国人社員を採用した企業では、「問題があれば本人から相談してくれるだろう」と考えてしまうことがあります。
しかし、実際にはそうとは限りません。
外国人社員が相談しない理由には、次のようなものがあります。
日本語の問題
日本語の日常会話ができても、
- 労働条件
- 社内規則
- 給与
- 有給休暇
- ハラスメント
- 契約内容
などの複雑な内容を日本語で説明することは難しい場合があります。
相談相手が分からない
「上司に相談していいのか」
「人事に相談するのか」
「現場のリーダーに言えばいいのか」
が分からないケースがあります。
会社に迷惑をかけたくない
外国人社員の中には、
「忙しい上司に相談するのは申し訳ない」
と考えてしまう人もいます。
仕事を失うことへの不安
「会社に不満を言ったら契約を更新してもらえないのではないか」
などの不安から、問題を言えないケースもあります。
そのため、会社側から**「困ったときはここへ相談してください」**と明確に伝えることが重要です。
3.どのような相談を受けるのか?
相談窓口を作るときは、最初に「どのような相談ができるのか」を決めておきましょう。
① 仕事に関する相談
例えば、
- 仕事内容が分からない
- 作業方法が分からない
- 指示が理解できない
- 勤務時間について確認したい
- 休憩について確認したい
- 有給休暇の取得方法が分からない
- シフトについて相談したい
- 職場のルールが分からない
などです。
② 人間関係に関する相談
外国人社員にとって、人間関係は大きなストレスになることがあります。
例えば、
- 上司との関係
- 同僚との関係
- 日本人社員とのコミュニケーション
- 無視される
- 強い言い方をされる
- 仲間外れにされる
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
などです。
特にハラスメントが疑われる場合は、単なる「人間関係の問題」として処理せず、会社として適切に対応する必要があります。
4.生活に関する相談も受けられるようにする
外国人社員の場合、仕事だけではなく生活面で困ることもあります。
例えば、
- 住居について
- 電気・ガス・水道
- 携帯電話
- 銀行口座
- 病院
- 交通機関
- ゴミ出し
- 市区町村での手続き
- 災害時の対応
などです。
特に日本に来たばかりの外国人社員は、日本の生活ルールに慣れていないことがあります。
会社がすべてを対応する必要はありませんが、「どこへ相談すればいいのか」を案内できる体制を作っておくと安心です。
5.在留資格・在留手続きについて
外国人社員からは、在留資格について相談されることもあります。
例えば、
- 在留期間更新
- 在留カード
- 在留資格変更
- 転職
- 退職
- 引っ越し
- パスポート
- 家族に関する手続き
などです。
ただし、在留資格や入管手続きについては、内容によって専門的な確認が必要になります。
そのため、会社の担当者だけで判断せず、必要に応じて行政機関、専門家、登録支援機関などへ確認する仕組みを作っておくことが重要です。
出入国在留管理庁では、特定技能制度に関する申請・届出や登録支援機関などの情報を公開しています。

6.相談担当者は誰にする?
相談窓口を作る際に重要なのが、担当者の選定です。
おすすめは、外国人社員と日常的にコミュニケーションを取ることができる人です。
例えば、
- 人事担当者
- 総務担当者
- 外国人材担当者
- 現場責任者
- 外国人社員の教育担当者
- 通訳担当者
などです。
ただし、直属の上司に相談しにくい問題もあります。
そのため、できれば**「直属の上司以外にも相談できる担当者」**を用意しておくことをおすすめします。
7.相談担当者に必要な5つのポイント
相談担当者を決めるときは、単に日本語が話せる人を選ぶだけでは十分ではありません。
① 話を最後まで聞ける
途中で判断せず、まず本人の話を聞くことが重要です。
② 秘密を適切に管理できる
相談内容には個人的な情報が含まれる場合があります。
そのため、誰にでも相談内容を共有するのではなく、必要な範囲で適切に管理する必要があります。
③ 公平な立場で対応できる
外国人社員の話だけを聞いて判断するのではなく、必要に応じて会社側の状況も確認します。
④ やさしい日本語で説明できる
難しい専門用語を避け、短く分かりやすく説明することが重要です。
⑤ 必要な場合に専門機関へつなげられる
担当者だけで解決できない問題について、適切な相談先へつなぐ判断力も必要です。
8.「やさしい日本語」を使う
外国人社員との相談では、難しい日本語をできるだけ避けることが重要です。
例えば、
「就業規則に基づき、所定労働時間を超過した場合には……」
という説明よりも、
「会社のルールでは、決められた仕事の時間があります。時間を超えて仕事をするときは、会社に確認してください。」
のように、短く区切って説明した方が伝わりやすくなります。
相談時のポイント
- 一文を短くする
- 難しい漢字を避ける
- 専門用語を説明する
- 一度にたくさん説明しない
- 必要に応じて図や写真を使う
- 相手が理解したか確認する
厚生労働省も外国人労働者向けに「やさしい日本語」による情報提供を行っています。
9.相談方法を複数用意する
相談方法は1つだけにしない方がよいでしょう。
例えば、
対面
直接話を聞く方法です。
複雑な問題について話す場合に向いています。
電話
急いで相談したい場合に便利です。
メール
相談内容を文章で残したい場合に向いています。
チャット
短い質問や簡単な確認に便利です。
オンライン面談
勤務地が離れている場合にも利用できます。
10.匿名で相談できる仕組みも検討する
すべての相談を匿名にする必要はありません。
しかし、
- ハラスメント
- 人間関係
- 給与
- 上司への不満
- 職場環境
などは、本人が名前を出して相談することに不安を感じる場合があります。
そのため、会社の規模や状況に応じて、
「匿名で相談できる方法」
を用意することも選択肢の一つです。
ただし、匿名相談の場合は、事実確認や具体的な対応が難しくなる場合があります。
そのため、匿名相談のメリットと限界をあらかじめ説明しておくとよいでしょう。

11.相談を受けた後の対応フローを決める
相談窓口は「相談を受けるだけ」では十分ではありません。
重要なのは、相談を受けた後にどう対応するかです。
おすすめの基本フローは次のとおりです。
STEP 1:相談を受ける
まず、本人の話を最後まで聞きます。
↓
STEP 2:事実を確認する
「いつ」「どこで」「誰が」「何をしたのか」を確認します。
↓
STEP 3:緊急性を判断する
すぐに対応が必要なのか、通常対応でよいのかを判断します。
↓
STEP 4:関係者に確認する
必要な範囲で会社側の事実確認を行います。
↓
STEP 5:対応方法を決める
社内で解決できる問題なのか、専門機関への相談が必要なのかを判断します。
↓
STEP 6:本人へ説明する
「会社としてどのように対応するのか」を本人に分かりやすく説明します。
↓
STEP 7:その後も確認する
問題が解決したか、本人が安心して働けているかを確認します。
12.相談記録を作る
相談内容を適切に記録しておくことも重要です。
例えば、次のような項目を記録します。
| 項目 | 記録内容 |
| 相談日 | 2026年○月○日 |
| 相談者 | ○○さん |
| 相談方法 | 面談・電話・メール等 |
| 相談内容 | 勤務時間について |
| 事実確認 | 本人・上司へ確認 |
| 対応 | ○○について説明 |
| 今後の対応 | ○月に再確認 |
| 担当者 | ○○ |
ただし、相談記録には個人情報が含まれる可能性があるため、保管場所、閲覧できる人、保存期間などの社内ルールを決めておくことが大切です。
13.緊急性の高い相談には別ルールを作る
すべての相談を同じスピードで処理する必要はありません。
例えば、
緊急性が高いケース
- 暴力
- 深刻なハラスメント
- 命や身体の安全に関わる問題
- 労働災害
- 深刻な健康問題
- 行方不明などの緊急事態
このようなケースでは、通常の相談フローではなく、会社の責任者や必要な専門機関へ速やかにつなぐ仕組みが必要です。
相談担当者が「自分だけで解決しよう」としないことも重要です。
14.登録支援機関との役割分担を明確にする
特定技能外国人を受け入れている企業では、登録支援機関を利用している場合があります。
その場合、
会社が対応すること
と
登録支援機関へ相談すること
をあらかじめ整理しておくと、対応がスムーズになります。
例えば、
| 相談内容 | 主な対応先 |
| 業務内容 | 会社 |
| 勤務シフト | 会社 |
| 職場の人間関係 | 会社+必要に応じて支援機関 |
| 生活相談 | 登録支援機関等 |
| 日本での生活ルール | 登録支援機関等 |
| 在留資格 | 専門機関・入管等へ確認 |
| 労働条件の法的問題 | 労働局・専門家等 |
| ハラスメント | 会社の相談窓口等 |
もちろん、実際の役割分担は、会社と登録支援機関との契約内容や支援体制を確認した上で決める必要があります。
15.会社だけで解決できない場合の相談先を知っておく
会社の相談窓口ですべての問題を解決できるわけではありません。
例えば、労働条件に関する問題については、厚生労働省の「外国人労働者向け相談ダイヤル」など、外国語で相談できる公的な窓口があります。2026年8月現在、英語、中国語、ベトナム語、ネパール語など13言語に対応しています。
また、総合労働相談コーナーでは、解雇、賃金、配置転換、いじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントなど、幅広い労働問題について相談できます。外国人労働者からの多言語相談にも対応しています。
特定技能制度や在留手続きについては、出入国在留管理庁の情報を確認し、必要に応じて適切な窓口へ相談することが重要です。

16.外国人社員に相談窓口をどう伝える?
相談窓口を作っても、外国人社員がその存在を知らなければ意味がありません。
入社時に必ず、
- 相談担当者の名前
- 電話番号
- メールアドレス
- 相談できる内容
- 相談可能な時間
- 緊急時の連絡方法
などを説明しましょう。
また、1回説明して終わりではなく、定期的に再案内することも大切です。
17.入社時に渡せる相談窓口案内の例
例えば、次のような案内を用意できます。
困ったことがあったら、一人で悩まないでください。
仕事、職場の人間関係、生活などで困ったことがあれば、いつでも担当者に相談してください。
「こんなことを相談してもいいのかな?」と思うことでも大丈夫です。
分からないことがあれば、一緒に確認します。
相談担当者:○○
電話:○○○-○○○○-○○○○
メール:○○○○
相談時間:平日○時~○時
このような案内を、母語ややさしい日本語でも用意すると、さらに相談しやすくなります。
18.定期面談で「困っていること」を確認する
外国人社員本人から相談が来るのを待つだけではなく、会社側から定期的に確認することも重要です。
例えば、面談で次の質問をします。
仕事について
- 仕事の内容は分かりますか?
- 困っている仕事はありますか?
- 分からない指示はありませんか?
職場について
- 上司とのコミュニケーションは問題ありませんか?
- 同僚との関係は大丈夫ですか?
- 職場で嫌なことはありませんか?
生活について
- 生活で困っていることはありませんか?
- 病院などで困っていませんか?
- 住居について問題はありませんか?
将来について
- 今の仕事を続けたいですか?
- もっと勉強したいことはありますか?
- 将来やってみたい仕事はありますか?
このような質問から、本人が自分から言い出せなかった問題を発見できることがあります。
19.相談窓口を作るときのチェックリスト
企業が相談窓口を作る際は、次の項目を確認してみましょう。
基本体制
□ 相談担当者を決めている
□ 相談担当者が不在の場合の代替担当者を決めている
□ 相談方法を決めている
□ 相談時間を決めている
□ 緊急時の連絡方法を決めている
多言語・コミュニケーション
□ やさしい日本語で説明できる
□ 必要に応じて翻訳・通訳を利用できる
□ 母語で相談できる方法を検討している
情報管理
□ 相談内容の記録方法を決めている
□ 個人情報の管理方法を決めている
□ 誰が相談記録を確認できるか決めている
問題解決
□ 相談後の対応フローを決めている
□ ハラスメント等への対応方法を確認している
□ 専門機関へつなぐ基準を決めている
□ 登録支援機関との役割分担を確認している
定着支援
□ 定期面談を実施している
□ 相談窓口を定期的に案内している
□ 相談内容を職場環境の改善につなげている
20.相談窓口は「問題を解決する場所」だけではない
外国人社員向け相談窓口というと、「トラブルが起きたときに利用する場所」と考えがちです。
しかし、本当に重要なのは、問題が大きくなる前に相談できる環境を作ることです。
例えば、
「この作業方法が分かりません」
「有給休暇の取り方を教えてください」
「日本の職場ではどうすればいいですか?」
「日本語の勉強について相談したいです」
といった小さな相談も受けられる環境を作ることで、外国人社員との信頼関係を築きやすくなります。
21.相談しやすい会社は外国人材の定着にもつながる
外国人社員が長く働くためには、給与や仕事内容だけでなく、「困ったときに会社が助けてくれる」という安心感も重要です。
相談窓口を整備することで、
- 問題の早期発見
- 職場トラブルの防止
- 外国人社員の不安軽減
- コミュニケーション改善
- 職場環境の改善
- 離職防止
- 外国人材の定着
などにつながる可能性があります。
つまり、相談窓口は単なる「問い合わせ窓口」ではなく、外国人材が安心して働き続けるための社内支援体制と考えることができます。

まとめ
外国人社員を受け入れる企業にとって、採用後のフォロー体制を整えることは非常に重要です。
特に、
「困ったときに、誰に相談すればいいのか分からない」
という状態をなくすことが大切です。
そのためには、
- 相談担当者を決める
- 相談できる内容を明確にする
- やさしい日本語で案内する
- 複数の相談方法を用意する
- 必要に応じて多言語対応する
- 相談内容を適切に管理する
- 相談後の対応フローを作る
- 緊急時の対応方法を決める
- 登録支援機関や専門機関と連携する
- 定期的に外国人社員の状況を確認する
といった仕組みを整えておきましょう。
外国人社員が、
「困ったときは会社に相談できる」
「話を聞いてもらえる」
「一緒に解決方法を考えてもらえる」
と感じられる職場を作ることが、外国人材の安心した就労と長期的な定着につながります。
外国人材の採用を成功させるためには、「採用すること」だけではなく、「採用した後に安心して働ける環境を作ること」が重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1.外国人社員専用の部署を作る必要がありますか?
必ずしも専用部署を設置する必要はありません。
人事、総務、外国人材担当者などを相談担当者として明確にし、外国人社員が相談先を分かるようにすることが重要です。
Q2.日本語があまり得意ではない社員にはどう対応すればいいですか?
やさしい日本語を使い、必要に応じて翻訳・通訳を利用します。
重要な内容については、本人が理解できたか確認することも大切です。
Q3.会社で解決できない問題はどうすればいいですか?
労働条件、在留資格、法律、医療など、専門的な判断が必要な場合は、適切な専門機関へ相談・確認することをおすすめします。
厚生労働省には外国人労働者向けの多言語相談窓口があり、労働条件などについて相談できます。
Q4.特定技能外国人の場合、登録支援機関にも相談できますか?
登録支援機関を利用している場合は、契約内容や支援体制を確認した上で、会社と登録支援機関が連携して対応することが重要です。
Q5.相談窓口を作った後に何をすればいいですか?
相談窓口を作るだけではなく、外国人社員へ定期的に案内し、実際に相談しやすい環境になっているか確認しましょう。
また、相談内容を個人情報に配慮しながら分析し、職場環境の改善につなげることも重要です。
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