令和7年4月21日から、法改正により特定技能外国人の訪問系サービスが解禁されました。
ー概要ー
これまでは特定技能介護が従事できる業務において、訪問系サービスは除かれていました。訪問介護員等の人材不足の状況などを踏まえ、一定の条件下で訪問系サービスへの従事を認めるべきとされ、改正に至ります。
対象となる訪問系サービスは、介護保険法に規定する訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護及び介護予防・日常生活支援総合事業です。新たに受け入れることができる施設として、住宅型老人ホーム、サービス付き高齢者住宅(サ高住)、訪問介護事業所が加わりました。
2 訪問介護系サービスを行う条件
訪問系サービスに従事するためには以下の条件を満たす必要があります。
- 初任者研修の修了
- 介護事業所等での1年以上の実務経験
※例外的に日本語レベルN2相当等、一定の条件で実務経験1年未満でも可能 - 訪問介護等業務の基本事項に関する研修を行う(OFF-JT)
- 一定期間、責任者等が同行しての必要な訓練を行う(OJT)
- 外国人介護人材の状況に応じたOJTの実施
- 特定技能外国人の意向等を確認したキャリアアップ計画の作成と更新
- ハラスメント防止の相談窓口を設置・ルールの作成
- アイパッド等の情報通信技術の環境整備を行う(ICT活用)
- 配慮事項について
- 事前に利用者、家族について説明を行い書面に署名をもらう
- 事前に適合確認申請を行い適合確認書の発行を受ける
- 巡回訪問実施機関への対応
初任者研修の修了について
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の修了が求められます。
講義と実技演習を通して、掃除・洗濯・料理などの生活支援と食事、入浴、排せつなどの身体介護等の介護職として働くうえで基本となる知識や技術を習得します。
介護事業所等での1年以上の実務経験
介護サービスへの実務経験を原則1年とします。しかし、
①例外的に日本語能力試験N2相当など、在留資格に応じて求められている日本語能力よりも高いレベルの能力を有する場合に訪問系サービスへの従事ができます。なお、外国にいるN2所有者が来日して初任者研修を修了した場合、訪問介護を行う介護職員としてすぐに働くことができます。
②同行訪問を利用者ごとに行い、以下の頻度、期間を守る。
- 週1回のサービス提供の場合(※)は同行訪問を半年行う
- ただし、利用者・家族の同意が得られる場合には、同行訪問を3か月行った上で、サービス提供時に見守りカメラを活用するなどICTを用いて常に事業所とやりとりが出来るようにすることで対応することも可能とする。
※週2回の場合は3ヶ月、週3回の場合は2ヶ月行いますが、これ以上の短縮は認められません。
訪問介護等業務の基本事項に関する研修を行う(OFF-JT)
訪問系サービスは利用者と介護者が1対1で業務を行うため、ケアの質を担保していくことが重要になります。訪問系サービスでは利用者ごと、居宅ごとの対応が求められ、また、利用者や家族の生活に配慮して、ケアマネジャーと協力して支援を行わなければなりません。そのため、外国人に訪問系サービスの基本や生活支援技術など、居宅において実施することを研修にて学びます。加えて、利用者、家族、近隣とのコミュニケーション(傾聴、受容、共感等)や、日本の生活様式など、利用者やその家族の生活習慣等に配慮したサービスを提供できるように研修を行います。また、緊急時の連絡方法や連絡先を事前に確認し、不測の事態に適切に対応できるように事前に想定した研修を行います。
一定期間、責任者等が同行しての必要な訓練を行う(OJT)
訪問系サービスでは柔軟な対応が求められるので、研修だけでなく、実際にコミュニケーションをとりながら質を高めていく必要があります。そのため、外国人が初めて訪問介護を行う際には一定の期間、サービス提供責任者や先輩職員が同行します。見学から始まり少しずつ業務を分担して外国人が1人で適切にサービス提供が出来るように指導します。
外国人介護人材の状況に応じたOJTの実施
外国人介護人材に訪問系サービスを行わせる場合にあっては、以下のような措置を講じます。
- 外国人の実務経験や能力等に応じて、徐々に業務に慣れることができるよう、OJTの期間を通常より長くすることや、面談を行うこと、日本語の学習支援に取り組むことなど、サービス提供責任者等が特段の配慮を行います。
- 適切に介護サービスの提供ができるよう、同行訪問の回数・期間をどう設定するかを外国人の業務の従事状況を踏まえて決定します。
- 訪問系サービスの従事開始当初においては、事業所に戻ってきた後の指導・面談の機会を多く設定することや、日本語能力を踏まえて語学力に関する支援を手厚く行うことなど、それぞれの外国人の状況・能力に応じた適切な支援を行います。
特定技能外国人の意向等を確認したキャリアアップ計画の作成と更新
外国人介護人材に訪問系サービスに従事させる場合には、あらかじめ業務の内容や注意事項等について説明を行い、意向を確認します。本人と十分にコミュニケーションをとり、外国人が習得する技能や目指すべき姿を明確にし、個人に沿ったキャリアアップ計画を共同で作ります。キャリアアップ計画の内容として、外国人本人の意向、日本語能力修得目標を含み、本人と共有します。このキャリアアップ計画は定期的に更新し、国際厚生事業団に提出を行います。
ハラスメント防止の相談窓口を設置・ルールの作成
- 訪問系サービスは1対1の業務となるので、利用者やその家族から介護職員へのハラスメント行為が行われた際の発見が難しくなります。そのため、ハラスメントの防止や相談体制の構築などによる権利保護を十分に行うことが必要です。具体的には、
- ハラスメントを未然に防止するための対応マニュアルの作成・共有、管理者等の明確化をします
- ハラスメントが発生した場合の対処方法等のルールの作成・共有、利用者やその家族への周知をします。
- ハラスメントが実際に起こった場合の対応として、当該ルールの実行、外国人介護人材が相談できる窓口の設置やその周知を行います。
なお、ハラスメントに関しては国において「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」や、管理者・職員向けの研修用の手引き、介護現場におけるハラスメント事例集を作成・周知しているため、これらの積極的な活用を行い、ハラスメントに対応します。
また、ハラスメント発生時には本人がICT(スマートフォン、タブレット等),コミュニケーションアプリを活用し、即座に事業所内で検討を行い、対応することができます。
アイパッド等の情報通信技術の環境整備を行う(ICT活用)
訪問系サービスは、1対1で業務を行うため、外国人の負担軽減の観点と、訪問先で不測の事態が起こった際に対応できるようにする手段として、コミュニケーションアプリの導入、日常生活や介護現場での困りごと等が相談できるような体制整備など、ICTツールの活用等の環境整備を行います。介護業務に使うICTツールとしては以下のようなものがあります。
- 多言語翻訳機(ポケトーク、Mayumi3)
- コミュニケーションアプリ(LINE, What’s up)
- 見守りカメラ、センサー、インカム
- 学習ツール(日本語、介護技術の学習に関する教材の活用)
配慮事項について
外国人の訪問先の選定については、受入事業所のサービス提供責任者、事業者等が以下の点を踏まえます。
- 利用者の健康状態・ADL・認知症の日常生活自立度・居住環境
- 利用者や家族の意向
- 外国人介護人材のコミュニケーション能力や介護の技術の状況、意向
その際、訪問先の選定の判断について、受入事業者において適切に記録を残すこととします。あわせて、利用者やその家族と介護職員の間でミスマッチが起こらないよう、受入事業者において、利用者やその家族に対して事前に丁寧な説明を行います。また、同行訪問の期間中に外国人が適切な支援が提供できるか、利用者と良好な関係性が構築できるかなどを考えて当該外国人によるサービス提供を継続するかを判断します。
事前に利用者、家族について説明を行い書面に署名をもらう
外国人介護人材が居宅に訪問して介護業務を行う可能性がある場合には、当該利用者やその家族に対し、以下の点などについて書面を交付して説明します。利用者や家族に書面に署名を求めます。書面の内容は以下を含みます。
- 外国人介護人材が訪問する場合があること
- 訪問予定の外国人介護人材について実務経験の期間等の要件を満たしていること
- ICT機器を使用しながら業務を行う場合があること
- 外国人の業務従事にあたって不安なことがある場合に連絡するための事業所連絡先
事前に適合確認申請を行い適合確認書の発行を受ける
受入事業所は外国人介護人材の訪問系サービス従事前に、国際厚生事業団に適合確認申請を行い、適合確認書の発行を受ける必要があります。
巡回訪問実施機関への対応
国際厚生事業団が外国人介護人材を訪問系サービスに従事させる受入事業所に対して巡回訪問を行います。上記の事項が適切に実施されているかどうかを事業管理者、サービス提供責任者、外国人介護人材本人等から確認します。適切な履行が確認できない場合は指導等が行われますが、指導等を通じても改善が見込まれない場合は外国人介護人材の受入れを認めない等の措置が行われます。
外国人材紹介ナビ/株式会社会社GSDA-JAPAN
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